2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520142
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
伊集院 敬行 Shimane University, 法文学部, 准教授 (90304245)
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Keywords | ル・コルビュジエ / ブルータリスム / 中井正一 / ジャック・ラカン / 映画 / アナモルフォーズ / 原抑圧 / シニフィアンの連鎖 |
Research Abstract |
学会発表においては、映像学会全国大会(5月30日)で、「中井正一の機械美学における映画とジャック・ラカンの精神分析理論」と題した口頭発表を行なった。この発表では、中井正一の機械美学にあるフロイトへの言及に注目し、中井にとって映画の空間が精神分析的な場であったことを明らかにした。また、美学会西部会例会(12月5日)で、「映画の上映空間としてのル・コルビュジエの建築空間」と題した口頭発表を行なった。この発表では、中井がル・コルビュジエに基づく機械美学を映画に応用する箇所に注目し、ル・コルビュジエの建築が映画の上映空間的な性格を持つことを明らかにした。 21年度のこれらの発表は、ル・コルビュジエの後期建築であるブルータリスムに見られるシュルレアリスム性の説明を可能にする準備段階としてそれらの重要性と意義がある。なぜならこれらの研究の成果を繋ぐことで、ル・コルビュジエの建築空間は精神分析的なものということになり、そこにシュルレアリスム性を見ることが出来るからである。 執筆においては、所属機関の紀要論文集『島大言語文化』でラカンの「シニフィアンの定義」について考察した論文を発表した。また、22年10月に発行予定である永井隆則編『デザインの力』(晃洋書房)のために、「無意識としての映像空間一映画《欲望》の中の写真の「眼差し」」と題する論文を執筆した。 前者は映画のモンタージュを「シニフィアンの連鎖」として考えるための基礎研究、後者は映像の画面をフロイトの「無気味なもの」として論じるための基礎研究あり、指摘に留まる中井の精神分析理論と映像に関する記述を検証し、証明するために必要な研究として、それらの重要性と意義がある。
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