2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520142
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
伊集院 敬行 島根大学, 法文学部, 准教授 (90304245)
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Keywords | ル・コルビュジェ / ブルータリスム / 中井正一 / フロイト / ハイデガー / 映画 / 精神分析 / 建築 |
Research Abstract |
本年度は、ル・コルビュジエのブルータリスムのシュルレアリスム性を説明する理論として、ル・コルビュジエの機械美学を映画理論と接合した中井正一(1900-1952)の美学について考察した。これまで全く論じられていないが、中井は映画をハイデガーに即して論じるために精神分析理論を応用している。そこでは映画は精神分析が行われる場、すなわち無意識のエスが暴露される場として理解され、これが現存在の本来的在り方と重ね合わされた。一方、中井はル・コルビュジエの機能美学を存在論的に論じたり、映画と結びつけて論じたりしている。 23年度は、主にこの点を強調したけ研究成果を、日本映像学会の第37回大会(於:北海道大学)、意匠学会の大会(於:国立民族博物館)で口頭発表した。前者では主に中井の映像論の精神分析的側面について、後者では中井のそのような映像論とル・コルビュジエの機械美学との関連についての考察を発表した。また、現在、『映像学』に研究成果をまとめた論文を投稿し、審査を受けている。 さて、中井が「機械美の構造」で映画とル・コルビュジエの機能主義美学を結びつけていることから、このような中井の映画の精神分析的理解は、ル・コルビュジエの機能主義美学にも当てはまると考えられる。これを踏まえるなら、ル・コルビュジエの後期スタイルであるブルータリスムに見られるシュルレアリスム性について、映像論的、精神分析的、存在論的な考察が可能になる。そして、これにより、単純な機能主義的からはみ出るものとしてモダンデザインの再定義が可能になるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、ル・コルビュジエのブルータリスムを論じるために、ル・コルビュジエの建築と映画を同時に論じた中井正一の美学に注目した。それは、中井は映画を論じるために精神分析理論を用いているので、中井の美学はブルータリスムを建築のシュルレアリスム的展開として論じるための理論的枠組みとなると考えたからである。しかし、中井の美学の精神分析的側面に関する研究が予想以上に困難だったため、研究に遅れが出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、映像学会の『映像学』に、中井正一の美学の精神分析的側面について研究した研究成果を投稿し、査読を受けている。また、去年度の意匠学会の大会での発表に基づき、中井正一の美学のモデルについての研究を現在執筆している。今年度はこれらの成果を踏まえ、ル・コルビュジエのブルータリスムを論じ、この成果を学会発表、論文投稿で発表する。そして、これまので論文をまとめた報告書を作成したい。
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