2010 Fiscal Year Annual Research Report
「組踊の系譜ー朝薫の五番から沖縄芝居、そして『人類館』へ」
Project/Area Number |
21520147
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
与那覇 晶子 琉球大学, 大学教育センター, 非常勤講師 (30412860)
|
Keywords | 組踊 / 沖縄芝居 / 人類館 / 系譜 / 沖縄語(ウチナーグチ) / 新作組踊 / 伝統/現代 / 仇討/愛 |
Research Abstract |
2010年度の主な研究成果は、まず、朝薫の組踊五番について『冠船踊方日記』を元に戌の冠船の記録から組踊について新しい認識が得られた。また朝薫や他の踊り奉行の大和芸能の影響関係についても新しい知見が得られた。その他「国立劇場おきなわ」がまとめた『琉球・沖縄芸能史年表(古琉球~近代篇)』(平成22年発行}の辞書を読み解く中で琉球近世から沖縄近代にいたる芸能の歴史が浮き彫りになった。近代の息吹と共に新しい沖縄芝居などの芸能(琉球舞踊)/演劇を享受する沖縄社会の諸相も伺える。それらを詳細に分析していく作業が次の課題になる。組踊の仇討物の系譜として『大川敵討(別名忠孝婦人)』を検証する中で、多良間島の組踊『忠孝婦人』を実際に観賞し、録画できた。近代のみならず戦後の「沖縄芝居」の中にも組踊の系譜が見られることが分かった。例えば『落城』(真喜志康忠作)もその一つで、『忠孝婦人』の一場面の影響が見られる。 近代の諸相をグローバルに認識する機会が得られたのも、一つの成果である。2010年度、IFTR/FIRT(国際演劇学会)(メインテーマ「Cultures and Modernity」ミュンヘン大学、7月25~7月31日)において、大城立裕作『さらば福州琉球館』の作品分析と創作過程のプロセス、また中国福建州で公演された舞台などについて研究発表をしたが、近代における沖縄、中国、日本の関係と近代沖縄から現代に至る「演劇創作の二重言語性」が新たな課題になった。従来口立てで演じられた沖縄芝居が脚本化される過程で、日本語表記(台本)から沖縄口語へ翻訳する段階を踏むこと、それが戦後もまた貫かれていることが大きな特性として明らかになった。組踊でも表記と舞台表出に違いがあり、二重言語性が沖縄演劇の大きな特徴であることが分かった。 さらに新作組踊『花の幻』『今帰仁落城』の観賞・上演録画・関係者インタビューは、伝統と現代、創作過程の検証、沖縄演劇のリバイタリゼーションを対象化する上でとても貴重な経験になった。
|