2011 Fiscal Year Annual Research Report
現代イギリス・ブラック・アート運動にみる表象文化と視線をめぐるポリティクスの研究
Project/Area Number |
21520153
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
萩原 弘子 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (90159088)
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Keywords | 移民論 / 黒人文化 / 視覚表象 / 思想史 |
Research Abstract |
先行する2年間に行なった展覧会と作品、評論の考察を系統立て、1980年代のブラック・アート運動から90年代の「文化的多様性」「新国際主義」に至るなかで、表象文化と視線のポリティクスの変化を思想史的観点から考察し、80年代の動きについて2本の論考にまとめた。 1.収集した資料の整理をひきつづき行ない、そこに収められた視覚的作品ないしは論考でとりあげられている人種、ジェンダー、階級に関わる論考を考察し、まとめた。研究対象とする時期は4半世紀を越え、展覧会は50以上、アーティストは約100人となった。 2.前年度に行なった現地調査で入手した美術機構関連の資料をもとに、それらの機構の活動の意味について考察した。なかでも1980年代ブラック・アート運動が、主として労働党が力をもつ地方行政府の反人種差別・多文化主義を標榜する文化行政によって支えられていた時代には、グループ展が圧倒的で、ブラック・アーティストの個展に公的機関が助成金を出すことは稀であった。この時期の展覧会に関する分析と考察を中心に行ない、論考2本にまとめた。 3.制度的人種主義だと批判された1980年代のそうした展覧会のありようを変えたのが、1990年代に始まったINIVA、ABPなどの美術機構であった。その意味でそれらの機構は文化の状況を変えた。それら美術機構が標榜する「文化的多様性」や「新国際主義」と、サッチャー政権が推進したネオリベラリズム改革にはイデオロギー的な並行関係があることを解明するため、現地で資料収集を行なった。
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Research Products
(2 results)