2011 Fiscal Year Annual Research Report
中世小説の生成発展過程の研究-伝本・説話・挿絵を中心に-
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21520194
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
勝俣 隆 長崎大学, 教育学部, 教授 (70141934)
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Keywords | 中世小説 / 御伽草子 / 室町物語 / 伝本 / 説話 / 挿絵 / 本文 / 生成発展過程 |
Research Abstract |
本年度は、当初の予定に基づき、国内及び海外に所蔵される中世小説の伝本の調査・撮影・資料収集・考察・翻刻等を行った。国内では、国会図書館・国文学研究資料館・明星大学・逸翁美術館・東京国立博物館等について、所在の調査や閲覧・資料収集等を行った。当初は、東北地方の調査にも行く予定にしていたが、3月1日の大震災とその後の福島原発の事故などもあって、東北地方の調査は中止した。またの機会に行く予定である。海外では、オランダのライデン民族学博物館やシーボルト・ハウス、及びベルギーのルーヴァン・カトリック大学(フランス語圏の新ルーヴァン)に所蔵される中世小説の伝本を調査して、写真撮影や考察、資料収集を行った。これらの中には、シーボルトが持ち帰ったものもあり、その伝来の由来が分かる点で意義がある。当該の伝本については、翻刻し紹介したいと考えている。 また、調査や考察に欠かせないのは、関連の研究書等であり、今回は、一部調査を止めた分も回して、予定より、やや多い研究書等の購入を行えた。これらは、今年度ばかりでなく、残りの期間の研究に役立つはずである。 研究論文等では、佐賀県の多久市郷土資料館で調査を行った伝本の中で、『小式部』の翻刻を行い、解題を付けて紹介することが出来た。また、説話文学会の例会におけるシンポジウムで、コメンテーターを行った分について、「海外に所蔵される奈良絵本・絵巻等を中心とした御伽草子関係資料について」という題目で、論文として発表出来た。これは、海外に所蔵される伝本の紹介と、それを研究することの意義を述べたものであって、海外での調査の一つの指針となるものと言えよう。まだ不備の点もあるので、今後の海外調査を通じて、さらに、その充実を図っていきたいと考えている。 以上、平成23年度においては、ほぼ順調に研究の遂行が出来たと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外の調査・国内の調査とも、ほぼ順調に行えているので、調査した伝本の翻刻を解題を付けて国内外に紹介したり、調査の中で分かった問題点や中世小説について考察した内容を論文の形で発表したりすることが、大体、予定通りに行えているからである。
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Strategy for Future Research Activity |
1、まだ閲覧すべき重要な伝本が残っているので、できるだけ多くの伝本を、国内・海外を問わず、調査・閲覧・考察したい。 2、調査の過程で、新たな発見がある場合が少なくないので、出来る限り早く、それらを論文等の形で発表したいと考えている。 3、いくつかの作品については、伝本調査がかなり進み、それらを整理して、その生成発展過程をかなり明らかに出来る段階まで来ているので、本研究が終了するまでに、書籍等のまとまった形で公にしたい。
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Research Products
(9 results)