2011 Fiscal Year Annual Research Report
近世琉球における和文学の研究-擬古文物語の考究および和歌の基礎的研究-
Project/Area Number |
21520195
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
萩野 敦子 琉球大学, 教育学部, 教授 (90343376)
|
Keywords | 日本文学 / 近世琉球の和文学 / 擬古文物語 / 平敷屋朝敏 / 和歌 |
Research Abstract |
三ヶ年の科学研究費交付期間の最終年にあたった平成23年度は、近世琉球の文人である平敷屋朝敏の擬古文物語四作品のうち『貧家記』『苔の下』について、先行する注釈研究と私注とを掲げた「注釈」を作成した。また、近世琉球の和歌を集めた『沖縄集』『沖縄集二編』のデータベース化に向けた入力を行った。 この二つの作業を同時並行で行ってきたが、その理由は、わたくし自身の過去の研究によって、平敷屋朝敏が和文でものした擬古文物語が、日本(ヤマト)の和歌言語に対する深い素養なしには成立しえないことを実感したためである。そこで、朝敏および後続の文人たちの和歌言語の受容の様相を、彼らの和歌そのものを見通すことによって明らかにしたいと考えた。 近年、ドラマ化・舞台化されるほど話題になった『テンペスト』(池上永一)や政治家の発言により改めて注目された『琉球処分』(大城立裕)が小説世界を借りて描いたように、琉球時代最末期=近代直前の琉球王国は、中国と日本(ヤマト)との間で絶妙とも微妙ともいえる立ち位置を取っていた。そのような立ち位置にあることを可能ならしめたのは、近世琉球に生きた人々の「受け入れる=享受する」姿勢の柔軟さである。本研究は、近世琉球において日本(ヤマト)の文学がいかに享受され、いかに吸収されて彼らみずからの血肉となったかを、実際の作品から証し立てるものである。と同時にこのことは、現代に生きる沖縄の人々の心根のありようにも、深く関わっているものであると実感する。
|
Research Products
(2 results)