2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520224
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Research Institution | Ishikawa National College of Technology |
Principal Investigator |
奥田 浩司 石川工業高等専門学校, 一般教育科, 教授 (90185538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶谷 崇 北海道工業大学, 未来デザイン学部・人間社会学科, 准教授 (10405657)
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Keywords | 大正デモクラシー / 吉野作造 / 『現代』 / 『学之光』 / 『開闢』 |
Research Abstract |
本年度の研究成果は、大きく以下の3点にまとめられる。 (1)朝鮮基督教青年会の機関誌である『現代』について、調査を行った。『現代』第1号(大正9年1月)に金俊淵の「現代の使命」が掲載されている。この評論は、創刊号の巻頭を飾っており、その意味で重要なものである。題名から推測されるように、この評論は機関誌『現代』の「使命」について論じていると考えられる。金俊淵はこの評論において「国家至上主義」は、軍国主義を助長し、植民地主義を正当化したと批判している。ところで、金俊淵の「現代の使命」の一節は、吉野作造が大正9年1月の『中央公論』の掲載した「政治学の革新」からの引用である。金俊淵によって引用された一節は、国家主義批判に関わるものである。この点から考えて『現代』が吉野作造の思想と何らかの関わりのある事が推測される。 (2)朝鮮語で書かれた雑誌(機関誌)において、デモクラシーに関する記事は『学之光』第20号(大正9年6月)に掲載された高永煥「デモクラシーの意義」(拙訳)、『開闢』第1号(大正9年6月)に掲載された玄波「「デモクラシー」の略義」(拙訳)が確認できた。掲載時期が同じであることが注目される。この時期に、朝鮮人知識人はデモクラシーに強い関心を抱いていたことが推測される。 (3)京城府立図書館所蔵の大正デモクラシー関係図書について調査した。確認できた図書は『問題と解決』(吉野作造著 大正15年11月文化生活研究会)、『南洋』(吉野作造編輯 大正4年12月民友社)、『全民衆の味方 吾等の弁護士 布施辰治』(本多久泰 昭和5年2月火花社)である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
朝鮮語雑誌『現代』の研究を通して、大正デモクラシーの思想を朝鮮人留学生がどのように受容したのかと言う点について、一定程度明らかになったと思われる。また『学之光』『開闢』を調査することで、同時期にデモクラシーに関する記事が掲載されていることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査によって明らかになった、『現代』『学之光』『開闢』における大正デモクラシー関連記事を邦訳する。その上で、共時性について考察を加える。同時に、典拠の存在について調査する。また大正デモクラシーの思想が、一般的な知識人にどのように受容されていたのかという点について、調査・研究を行う。ここに言う一般的な知識人とは、高等教育を受け、アカデミズムやジャーナリズムに帰属しない知識人をさす。
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Research Products
(2 results)