2009 Fiscal Year Annual Research Report
中世後期成立の百科全書的テキストに関する基礎的研究
Project/Area Number |
21520226
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Research Institution | Kure National College of Technology |
Principal Investigator |
小助川 元太 Kure National College of Technology, 人文社会系分野, 准教授 (30353311)
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Keywords | 『〓嚢鈔』 / 百科事典 / 中世後期 / 『後素集』 / 『源平盛衰記』 / 僧の自伝 |
Research Abstract |
21年度は、3年間の土台作りの作業を行うため、百科全書的テキストの定義づけと研究対象作品の選定、『〓嚢鈔』のデータベース化の作業を中心に行う予定であったが、計画通りには進まず、百科事典的テキストの収集とそれらの読み込み作業が中心となった。ただし、対象作品である『後素集』に関する査読論文が公刊されたことに加え、当初の計画にはなかった新たなアプローチの仕方が見いだせたという点で、当該年度は十分な成果が出せたと考えている。まず、純粋な百科事典的テキストとは言いがたいが、当初から研究対象候補の一つと考えていた作品で、他の百科事典的テキストと同一の基盤から生まれたと考えられる軍記物語『源平盛衰記』に着目して研究を進め、その成果の一部を発表した。『源平盛衰記』の記述態度や情報提供の仕方はまさに百科事典的テキストに通じるものがあるため、今後はそのような編集方法の問題も、本研究課題の中で明らかにしていきたいと考えている。また、本研究課題の中心となるテキスト、『〓嚢鈔』の編者に関わる研究として、行誉書写本『八幡愚童訓』の翻刻を発表した。さらに、『〓嚢鈔』編者の自伝、醍醐寺所蔵『僧某(行誉)年譜』の研究に深く関わる研究として、中世における「僧の自伝の系譜」の研究発表を行った。これは行誉を含む、同時代に生きた宗派の異なる僧の自伝の特徴とその研究意義について考察したものであるが、中世後期の寺院社会における僧の知的営為を考える上では必要不可欠な問題であると考えている。以上のように、『源平盛衰記』の問題と中世後期の僧の自伝の問題を本研究の中で明らかにすることは、当初の計画とは若干アプローチの仕方とは異なるが、中世後期における百科事典的テキストの成立環境を明らかにするという意味では、当初の計画に劣らない有効な方法であるという実感を得た。ゆえに、計画に加えて今後も継続したいと考えている。
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Research Products
(4 results)