2011 Fiscal Year Annual Research Report
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21520236
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
高際 澄雄 宇都宮大学, 国際学部, 教授 (50092705)
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Keywords | 英米文学 / イギリス音楽 / イギリス演劇 / 18世紀イギリス / 17世紀イギリス |
Research Abstract |
本年度においては、ジョン・ゲイの『乞食オペラ』がヘンデルの歌劇にどのような影響を与えたかを調べた。ゲイの本作品が1728年に初演された時、きわめて大きな反響があったことは知られているが、1728年の第1次ロイヤルアカデミー破綻の原因が『乞食オペラ』の流行だけではなかったことも、研究者の間では現在常識化している。本調査において、『乞食オペラ』の作品的特徴を明らかにするとともに、他の同様の作品、つまりバラッド・オペラの諸作品が、ヘンデルの歌劇にどの程度の影響を与えたかを考察した。結論から言えば、『乞食オペラ』以外ものはヘンデルの歌劇に対抗するような作品的完成度をもたず、ヘンデル自身、バラッド・オペラを考慮せずに歌劇作品の制作公演に遭進していった。バラッド・オペラ諸作品には、『乞食オペラ』のような厳しい社会批評的な作品は少なく、田園的、あるいは家庭的な作品さえあった。つまり、ヘンデルが1730年代に新しい歌劇作品を発展させていった時、その発展を止める力強い対抗ジャンルとはならなかったのである。 ではヘンデルが『アルチーナ』でイタリア歌劇第2の頂点を築いてから、イギリス国内でイタリア歌劇への興味が急速に薄れていった原因は何なのか。それはまだ明らかにできていないが、ヘンデルの対抗策であったオラトリオの制作公演に関して、その様式で作られた『セメレー』の特質を明らかする必要がある。オラトリオは聖書の物語を題材とするが、『セメレー』はギリシア神話に基づいており、厳密な意味でのオラトリオではない。本年度はその先行作品、1708年に作曲はされたが公演されなかったエックレスの『セメレー』を分析した。英語による歌劇として作曲された本作品は、豊かな可能性を秘めていたにもかかわらず、当時の聴衆の要求に合うような特質を備えていなかったことが明らかになった。今後ヘンデルが自身の作品でどのようにその問題に対応したのかを分析したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最初の予想から考えられなかった事実が明らかになった。例えば、バラッド・オペラのジャンルにのどかな作品が含まれていることは、一般には考えられていない。制作されながら公演されなかったゲイの『ポリー』、あるいはフィールディングの演劇のような社会批判的な作品が主流だと考えられているからである。エックレスの『セメレー』の分析でも新しい観点が得られた。ただし、1740年代演劇の調査にまで進めなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度には遅れている1740年代の演劇作品の分析を行い、遅れを取り戻したい。
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Research Products
(3 results)