2012 Fiscal Year Annual Research Report
ポストモダニズムにおける社会的責任と道徳ー新しいユダヤ系アメリカ作家の抵抗
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21520255
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
新田 玲子 広島大学, 文学研究科, 教授 (40180674)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | アメリカ文学 / ユダヤ系作家 / ポストモダン / ホロコースト / 国際文学心理学会 / ウォルター・アビッシュ / ショーレム・アレイヘム / J・D・サリンジャー |
Research Abstract |
平成24年6月、ベルギーで開催された第29回国際文学心理学会において、1950年代に活躍したユダヤ系アメリカ作家のJ.D.サリンジャーにポストモダニズムを先取りしている点が認められるという新たな指摘をする一方、そのポストモダン的試みの限界を明らかにする発表を行った。また、この機会を利用して、各国の研究者とポストモダンの思想や新しいユダヤ系作家の動向について意見交換を行った。 また、平成24年9月にはニューヨークのユダヤ系アメリカ作家ウォルター・アビッシュを訪問し、彼の最近の動向を学ぶと共に、新しいユダヤ系作家の考え方について教示してもらった。この渡米に際しては、ミシガン大学やミネソタ大学の図書館において現代ユダヤ系作家に関する資料収集も行った。 さらに、昨年全体では、これまでやってきたアビッシュの作品論を作家論としてまとめる作業を行った。また、やはりこれまでやってきたポストモダンの思想家の研究書をさらに読み進めた。そして、その両研究を合わせて、Abishに関する作家論を完成させた。その成果は平成25年度の国際学会、国内学会で発表予定である。 昨年新たに始めたことは、昨年の国際学会でサリンジャーに関する発表を行ったように、平成25年度の最終年度に向け、ポストモダンの作家とそれ以前の作家との比較を増やすことであった。同様の目的で、11月にはショーレム・アレイヘムの作品の研究成果を信州大学における公開講座で公表した。この内容はさらに洗練されたものにして、平成25年度秋に予定されている広島大学の市民講座で広く公開予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、リオタールやジェイムスンらのポストモダン思想家だけでなく、デリダ、レヴィナス、アドルノなどのポストモダンユダヤ系思想家について学びつつ、ポストモダンのユダヤ系作家の代表格であるふたりの作家、レイモンド・フェダマンとウォルター・アビッシュの研究を行ってきた。これらの研究はほぼ完成の段階に達している。そして、彼らの活動をより広い目で評価できるように、平成24年度には彼らより以前の作家を取り込み始めた。今年度、こうした他の時代の作家とポストモダンユダヤ系作家を比較を推し進め、ポストモダンユダヤ系作家のユダヤ的性質をより鮮明にして、最終年度にふさわしい結論を導き出す予定でいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は本研究の完成年度なので、これまで個別に行ってきた作家・作品研究を集約してゆくようにしたい。 ひとつには、昨年度完成させたよりアビッシュの作家論を国内外に広く公表したい。また、ポストモダン思想家の幅広い活動を視野においてポストモダンユダヤ系作家のユダヤ性の分析を行うだけでなく、初期ユダヤ系作家や第二次世界大戦直後から60年代までのユダヤ系作家の活動を再検討しなおすことで、ポストモダンユダヤ系作家が受け継いできた社会的責任や道徳性について、より明瞭な形で提示できるようにしたい。
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Research Products
(8 results)