2011 Fiscal Year Annual Research Report
チカーノ演劇の境域性とアメリカ先住民文化における語りの伝統
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21520265
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
喜納 育江 琉球大学, 国際沖縄研究所, 教授 (20284945)
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Keywords | アメリカ文学 / アメリカ演劇 / チカーノ文学 / チカーナ / グローリア・アンサルドウーア / シェリー・モラガ / 境域(ボーダー) / アメリカ先住民 |
Research Abstract |
最終年度となる本年度は、本研究課題で追究すべき問題を集約しているという点からこれまで注目してきたシェリー・モラガの研究に専念した。まず、モラガの1995年発表の演劇Circle in the Dirtに着目し、作品の主題となる「共同体」の概念には、多文化主義的な社会的マイノリティが協働して築く新たな共同体の可能性が描写されていると同時に、多文化共同体の「場所」である「境域」の歴史への想像力が表現されていると論じた。この論点については、7月に南山大学で行われた国際セミナー「名古屋アメリカ研究夏期セミナー2011」で口頭発表し、有意義なフィードバックを得ることができた。本研究を通して、境域性と同時にその境域を共存すべき具体的な「場所」として認識する意識にモラガの先住民としての感性が表現されていることを理解した。本年度はさらにモラガが約10年ぶりに発表した新作New Fire : To Put Things Againを観る機会も得た。New Fireで強調されているインディオ文化の表現や「祈り」としての「歌」や「音楽」の存在に、モラガの演劇の底流に先住民文化の口承伝統があることを確認した。本年度再びモラガへのインタビューを果たし、New Fire制作の意図について聞くことができたことも有意義だった。 コミュニティ・シアターの役割についても、シェリー・モラガが関わり続けてきているカリフォルニア州サンフランシスコにあるブラヴァ・シアター(Brava Theater)について調査し、同劇場が、単なる上演の場を提供するだけでなく、有色人種かつ性的マイノリティとしてのアイデンティティに対する「自信を創出(empower)」する若手・次世代育成の場としても機能していることを理解した。このほか、モラガに関する論考を、本年度7月に出版した単著『<故郷>のトポロジー』の第6章に収録した。
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Research Products
(4 results)