2011 Fiscal Year Annual Research Report
環大西洋文化における形体的修辞と言語・身体・技術の境界に関する研究
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21520271
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
梶原 克教 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (90315862)
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Keywords | カリブ海地域 / 文化論 / ポストコロニアリズム / トリニダード:ジャマイカ / 国際情報交換 / 修辞法 / 表現媒体 / 行為遂行性 |
Research Abstract |
本年度の研究成果として最も重要な点は、カリブ海から北アメリカにかけての環大西洋圏文化において歴史的に散見されるテーマ的特徴が、テクノロジーの変遷を経たのちに、その身体性との関係性を新たに構築しながら、形式的特徴の一つとして反復されていることが発見されたことである。当初、本年度3月に出版予定だったものの、他執筆者の問題で出版が翌年度にずれ込んだ論文集に掲載予定の論文では以下の点を明らかにしている。すなわち、環大西洋圏文化における「亡霊的反復とズレ」というテーマ的特徴性を、形式の面における「形体性」の問題に関係づけるに当たり、これまで20世紀を中心に考察していたのだが、19世紀に遡って共通性を発見することによって、その文化的特徴性の歴史的厚みが明らかになった。 同時に、これはまだ発表前の段階だが、上記のテーマ的特徴が、20世紀のおわりから21世紀にかけてのテクノロジー上の変化/メディア環境の変化を経たのちも、表現形式の側面において継承されているということが明確になりつつある。それは、サンプリングや規則的ビート・クリック音などの反復に乗せられる、身体としての声がもたらすズレや揺らぎという問題である。さらに、19-20世紀におけるカリブ文学における民話の語り直しとその口承性とは、同じ物語内容を以下に異なる形で(ずらしながら)語るかという点に重点が置かれていることを考慮するなら、ヒップホップやレゲエやソカという環大西洋圏において突出している現代文化におけるテーマとも接ぎ木が可能であることが予測できる点が見えてきたことも、萌芽的意味でも重要性を持っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
環大西洋文化における機械的メディアと身体性の関係について、規則的な機械音の反復に加えられる身体としての声のフローによるズレが、文学等文字表現における形式的反復性およびテーマにおける「亡霊的なもの」の反復性と類似の関係にあることが見えてきたため、研究はおおむね順調に準展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
環大西洋文化について、「形体性」に代表される修辞および文字媒体における表現特性については、おおむね追求し尽くしたと思われるので、音響特性に関する研究により多くの時間と労力を注ぐことになる。とりわけ、研究課題を設けた時期にくらべて、音響に関する研究も増加の一途をたどっているため、その方面での情報のアップデートをおこなう必要がある。
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Research Products
(2 results)