2009 Fiscal Year Annual Research Report
英米アイルランドの現代詩劇・演劇における古典ギリシア劇・神話の現代化の総合的研究
Project/Area Number |
21520277
|
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
堀 真理子 Aoyama Gakuin University, 経済学部, 教授 (50190228)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 亨 青山学院大学, 経営学部, 教授 (40245337)
外岡 尚美 青山学院大学, 文学部, 教授 (10227605)
伊達 直之 青山学院大学, 文学部, 教授 (30316880)
|
Keywords | 英米文学 / 比較文学 / 美学 / 芸術諸学 |
Research Abstract |
今年度は研究者各自が、古典ギリシア劇や神話の現代化という本研究に関わる研究資料や文献を収集し、データベース化した。また、個々に学会発表や雑誌論文執筆等を通して古典の現代化の意味を追究した。Terry Eagletonがその著書Sweet Violenceにおいて、過去の悲劇理論が悲劇に内在する残酷な暴力や肉体的苦痛の記述を研究課題にしてこなかったと述べているように、21世紀に入って非人間的な暴力や肉体的苦痛に焦点を当てた文学批評書や思想・哲学書がつぎつぎに出版され、古典悲劇と現代文学の近さが以前にも増して強調されてきている。他方、劇作術や詩作術においても、脱リアリズムの傾向から、儀式性の強い神話的な枠組みをもつ作品が書かれるようになり、古典悲劇の再生とも言えるような様式性を備えた作品が注目されている。古典と現代の詩劇を比較検討する本プロジェクトの重要性はますます高まっていると言える。 その実践例として、2009年6月、本プロジェクトでは、海外共同研究者として本研究に貢献してくださっている南カリフォルニア大学演劇学部教授で劇作家のVelina Hasu Houston氏を迎え、沖縄戦および沖縄の米軍基地の問題に焦点を当てた『アンティゴネー』翻案劇の構想についてお話いただいた。さらに2010年2月には、現代を照らす古典世界の理解を深めるために、日本の神話学の第一人者、吉田敦彦氏に、『ピロクテテス』を中心にその神話的背景およびソボクレスの劇作術、教育劇としての効果について講演をしていただいた。それぞれ、講師の方々とともに意見交換を行なうことを通して、本プロジェクト研究者相互の共通する基盤と方法論を確認することができた。
|