2010 Fiscal Year Annual Research Report
メスメリズムとフェミニズム:1840年代アメリカ・ルネサンスとボストンの女性文化
Project/Area Number |
21520280
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
庄司 宏子 成蹊大学, 文学部, 教授 (50272472)
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Keywords | 英米文学 / フェミニズム |
Research Abstract |
本研究は、1840年代に超絶思想(Transcendentalism)など進歩的思想の広がりのもと、いわゆるアメリカ・ルネサンスと呼ばれるアメリカ文学の隆盛期がボストンを中心とするニュー・イングランドで形成される時代に、その文化の影響を受けつつそれに参入したボストンの女性たちのネットワークを辿り、その生活、文学、思想を追跡することを通じて、同時代の女性が体験した超絶思想をアンテベラム期のアメリカ文化史の一側面として解明することを目的とする。 平成22年度は19世紀の30年代から40年代にかけて、この時代の重要なキーワードである"sympathy"という概念が文化のさまざまな局面でどのように用いられていたか、またこの語の使用に現れている文化の動因について高察することを試みた。そのためアメリカ(スタンフォード大学)に出張し、当時の文献(雑誌や文学テキストなど)から"sympathy"に関する記事を収集した。通常"electric"や"magnetic"という形容を伴って現れる"sympathy"は、人間と人間の関わり方、人間と社会の関わり方を表す重要概念であり、トランセンデンタリズム(エマソン、ホーソーンなど)のみならず、急速に変化する社会(商人階級、職人階級の台頭、デモクラシーの発展、産業化と都市化、西漸運動等)で社会の吸引力をいかにして保つかということを説いた牧師の説教集、奴隷制度廃止などの社会改革運動の演説、果てはメスメリズムなどの文献にも頻出する語である。あまりにも多方面で登場し、捉えがたい概念であるがジャンル横断的に文献を読み解くことで、"sympathy"から捉えたアメリカ・アンテベラム期の文化論を展開することを試みた。この成果を論文2本に収めた。
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