2011 Fiscal Year Annual Research Report
メスメリズムとフェミニズム:1840年代アメリカ・ルネサンスとボストンの女性文化
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21520280
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
庄司 宏子 成蹊大学, 教授 (50272472)
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Keywords | アメリカ文学 / フェミニズム / トランセンデンタリズム(超絶思想) / メスメリズム |
Research Abstract |
1840年代に超絶思想(Transcendentalism)の広がりのもとで、いわゆるアメリカ・ルネサンスと呼ばれるアメリカ文学の隆盛期がボストンを中心とするニュー・イングランドで形成される。本研究はこの時代にアメリカ・ルネサンスの文化の影響を受け、それを推進したマーガレット・フラーをはじめとするボストンの進歩的な女性たちのネットワークを辿り、その生活、文学、思想を追跡することを通じて超絶主義運動をアメリカ女性の体験から捉え、そこから生まれるフェミニズム運動をアンテベラム期のアメリカ文化史の一側面として解明することを目的とする。平成23年度の主たる研究活動としては、研究の遂行に必要な文献を収集し、2本の学術論文と1回の研究発表を行った(うち論文1本は共著本に収録し、刊行は平成24年度となる)。資料収集の方法としては、購入の他、アメリカのスタンフォード大学およびカリフォルニア州立大学バークレー校の図書館における資料の閲覧と複写、また成蹊大学情報図書館を通じた国内外のインターライブラリーを利用した。 従来のアンテベラム期のアメリカ文学研究はアメリカ・ルネサンスを代表する作家ホーソーンやメルヴィル等、また超絶主義者のエマソン、ソロー等の男性作家や思想家の研究が主たる対象で、同時代の女性作家や活動家に関するまとまった研究はほとんどないのが現状である。本研究は西漸運動と奴隷制度をめぐる国内外の緊張の中で、また帝国化するアメリカの文化的ナショナリズムの時代において女性たちがどのように関わったのかを明らかにしようとする点において独自性と意義を備えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の達成度はおおむね順調といえる。資料収集は順調に進んでおり、資料分析と論文執筆も行っている。研究を遂行するなかで、当初の研究目的に記したボストンの女性の活動について、ポストコロニアル的な視点からの検討を始めるなど、研究視野も広がっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当初の研究計画にそって研究の遂行に当たる予定である。アンテベラム期の社会的状況と女性たちの文化への関わりを、トランセンデンタリズムの中心であったマーガレット・フラーの著作、またメアリー・ピーボディ・マンの小説、ソファイア・ピーボディ・ホーソーンの日記、その他リディア・マリア・チャイルドやキャロライン・ヒーリー・ドール等アボリショニズム(奴隷制度廃止運動)に関わった女性たちの小説、特にアボリショニズムのメッセージを児童文学という形式で書いた小説等の分析を通じて明らかにしたい。当該研究によって、この時代の国家の運動と女性たちの関わり、西漸運動と国土拡大のなかで帝国化する国家との関わりを、連動と批判という両面から分析し、アンテベラム期のアメリカ文学研究に新しい視点を導入したい。
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