2009 Fiscal Year Annual Research Report
舞台衣装からみるチューダー朝演劇-衣装調達・演出と劇団の変遷-
Project/Area Number |
21520282
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
小林 酉子 Tokyo University of Science, 理工学部, 教授 (60277283)
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Keywords | エリザベス朝演劇 / インタールード / 舞台衣装 / 英文学 / 服飾史 |
Research Abstract |
本研究は、チューダー朝初期に王侯のお抱え劇団が誕生してからエリザベス時代に商業劇団が最盛期を迎えるまでを対象に、舞台衣装の視覚化復元を行い、[1]劇作品執筆の背景や上演の実態、[2]舞台衣装の調達とその後の流れ(購入、作り替え、売却)を中心に、英国近世演劇史をまとめることを目的としている。 平成21年度は、エリザベス朝(1558-1603)の前・中期にあたる1590年代前半まで、約30年間の演劇と衣装について研究を行なった。1570年代前半までに主に演じられていた芝居はインタールード(interlude)と呼ばれた短劇で、道徳劇、奇跡劇などのように筋書きが概ね定まっており、衣装も役柄に応じて固定されていたが、それらの衣装を文献、絵画資料等から明らかにした。 1570年代後半になると、貴族お抱えの俳優たちの中から、職業俳優が生まれ、商業劇団が結成されるようになった。ロンドンには劇場が次々と建設され、劇作家の書き下ろす劇(play)が広まっていった。1580年代後半から90年代初頭の芝居は、マーロウの『タンバレン大王』のように大時代的で、豪華な衣装と派手な演出が特徴であった。劇団は離合集散しながら、疫病流行による劇場閉鎖、巡業、宮廷公演などを経験していったが、劇団を取り巻く環境と舞台衣装の調達、売却は密接に関連していた。草創期の劇団保有衣装はおそらく、貴族や宮廷饗宴局からの払い下げ、あるいは祝儀などで構成されていたと思われる。21年度は、上記の点を明らかにし、論文発表を行なった。 また、ロンドンのテムズ川南岸に1588年に建設された商業劇場ローズ座発掘現場での実地調査、マンチェスター郊外Helmshore Mills Textile Museumで手工業時代の手紡ぎ・手織り工程と用具の調査、Shakespeare Institute(シェイクスピア研究所)が所蔵する17世紀の道化肖像画調査を行なった。
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Research Products
(3 results)