2011 Fiscal Year Annual Research Report
近代英国を中心としたエンブレムにおける聖と俗の表象に関する学際的研究
Project/Area Number |
21520283
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
植月 恵一郎 日本大学, 芸術学部, 教授 (10213373)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 美作子 成城大学, 文芸学部, 准教授 (10407611)
山本 真司 天理大学, 国際学部, 講師 (80434976)
伊藤 博明 埼玉大学, 教養学部, 教授 (70184679)
木村 三郎 日本大学, 芸術学部, 教授 (00130477)
出羽 尚 日本大学, 芸術学部, 研究員 (00434069)
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Keywords | エンブレム / シェイクスピア / オットー・ウェニウス / シャンパーニュ / ヴィーリクス / リーパ / ターナー / ジオット |
Research Abstract |
本研究の最終年度に当たり、当初の目的である大陸・英国間のエンブレム受容関係を聖と俗の二つの側面からの考察を深めた。まずイタリアを中心とする大陸のエンブレムを担当する伊藤は、16世紀の後半にローマでイエズス会によって刊行された図解入り聖書、およびアルチャートの『エンブレム集』の、キリシタン文学の『ヒデスの導師』と『平家物語』の題扉への影響などから聖なる側面を主に研究した。6月にはその成果をエンブレム研究の拠点グラスゴー大学開催のエンブレム学会世界大会で発表した。同じくフランスを主とする大陸のエンブレム担当の木村は、やはり聖なるエンブレムに関する論文「フランス近代における《慈愛の寓意》と炎の図像について」を刊行した。一方、松田は、近代初期英国におけるエンブレムの受容と変容、およびシェイクスピア作品におけるエンブレムとの相関関係を論じた単著『シェイクスピアとエンブレム-人文主義の文化的基層』を上梓し、主に初期の人文主義的なエンブレム・ブックを取り上げ、当時の表象文化に広範な影響を与え、16世紀後半から17世紀にわたる宗教的な意図をもったエンブレム・ブックの隆盛に寄与した点を強調した。山本は、逆に当時の俗なる宴会の席でエンブレムが英国ルネサンス期の宴会においてどのように用いられているかに注目し、主にバンケット(デザート)用木皿に描かれたエンブレムやエンブレム的図絵と、それに付随する警句詩の分析を通して、エンブレムの(食文化や装飾文化を含む)物質文化的背景を考察し、上記の伊藤と同学会で'Banqueting Trenchers and the Emblematic Tradition in English Renaissance Culture and Society'というタイトルで発表した。 植月は詩の方に注目し、こちらも俗な動物表象とくに極楽鳥や鹿のエンブレムの系譜を探った。出羽は本年度もエンブレムと風景版画の調査を継続し、ロンドン、パリへの出張を行い、その成果の一部を美術史学会全国大会における口頭発表、ならびに『國學院大學紀要』第50号へ論文を掲載した。六人の連携によって、エンブレムの大陸から英国への空間的変容、及び16世紀から19世紀までの時間的変容を明らかにできた。
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Research Products
(23 results)