2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヘンリー・フィールディングとプレス-18世紀英国における政治文化形成の形態研究
Project/Area Number |
21520290
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
一ノ谷 清美 Meijo University, 人間学部, 教授 (30249669)
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Keywords | ヘンリー・フィールディング / ジャコバイトの反乱 / 18世紀英国政治文化 / ジャーナリズム |
Research Abstract |
ヘンリー・フィールディングの創刊、編集した4つの新聞に関して、報道内容、政治的イデオロギー、レトリックを分析し、同時代の他の新聞、小冊子と比較することにより、18世紀英国における政治文化の形成過程の一端を明らかにすることが、本研究の目的である。本申請研究1年目にあたる、平成21年度は、『真の愛国者』(1745-46)について考察した。ジャコバイトの反乱(1745)という、国制の危機に際して発刊された本新聞で、フィールディングはハノーヴァー王朝支持の論陣を張った。本申請研究で、政治パンフレットおよび新聞紙上でのフィールディングの議論が、オールド・ホイッグの議論の系譜に連なる名誉革命観を論拠としていることを確認した。また、研究の計画段階では予想していなかったが、ペラム政権と国王との対立関係とそれに起因する議会の混乱が、『真の愛国者』の論調に影を落としていることに気がついた。ペラム支持のレトリックが、反ジャコバイトのレトリックと重なり合っていることを明らかにした。今後の課題として、ジャコバイト擁護派の議論とフィールディングの議論との比較が残っている。 以上の考察と平行して、プレスが世論形成にどのようなかたちで関わっていたかを考察するために、特に、18世紀の選挙期間中に売り出された新聞、小冊子、諷刺版画が、主張、レトリックを相互利用していることを例証した。このメディア間の連結は、票の獲得という直接的な効果よりも、むしろ、投票資格の無い者をも含む社会全体の流れを作ることを目的としているように見える。18世紀を通じてこのような間接的な効果をねらった手法が洗練されていく過程を、今後も例証していきたい。
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