2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヘンリー・フィールディングとプレス-18世紀英国における政治文化形成の形態研究
Project/Area Number |
21520290
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
一ノ谷 清美 名城大学, 人間学部, 教授 (30249669)
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Keywords | ヘンリー・フィールディング / ジャーナリズム / 18世紀英国政治文化 / ジャコバイトの乱 / 名誉革命体制 |
Research Abstract |
ヘンリー・フィールディングのプレス活動の具体的検証を通じて、18世紀英国の政治文化形成の形態を明らかにするのが本研究の課題であった。本年度は、フィールディングの政治思想の源泉をたどったJ. A. Downieの著作について書評を学会誌に発表した。その際、Downieが主張する、1720年代のオールド・ホイッグの議論、さらには17世紀の共和主義思想と、フィールディングの政治観とのつながりという問題について、私なりに検証と批判を試みた。昨年度からジャコバイトの乱(1745-46)の際のプレスにおける王朝論を調べていたのだが、この書評執筆が契機となり、さらに名誉革命体制擁護の議論について多くの文献を読むことになった。18世紀中葉になっても、名誉革命体制についての議論の必要があった現実政治に、フィールディングのプレス活動は対応したものであった。と同時に、彼のもともとの名誉革命体制擁護の思想も表出することができたのである。本研究の研究実施計画では、フィールディングの創刊した4つの新聞のすべてを検討するはずであったが、1745年前後のプレス状況の検討に、予定以上に焦点をあてることになり、彼の最後の新聞発行(1752)の検討にまで至らなかった。しかしながら、この3年間の研究を通じて、1730年代のウォルポール政権下のプレスを中心とした政治文化とは異なる質の政治文化が、1740年代を通じて形成されていたことは確認できた。それは、政治議論の内容と修辞が専門化していく傾向と、それと反対方向の動き、すなわち、わかりやすいプロパガンダを第一目的にした議論の傾向とが共存していたことである。この現象は、現実政治に、「議会の外の人びと」が影響を与える可能性が出てきたこと、すなわち「公論」形成が実体化したことを示すと考えてよいであろう。そして、フィールディングも、このプレス全般の傾向に従っていたのである。
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