2010 Fiscal Year Annual Research Report
ジェイムズ・シャーリーの『宮廷の秘密』の手書き原稿と出版テキストとの比較研究
Project/Area Number |
21520308
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Research Institution | Fukushima National College of Technology |
Principal Investigator |
石原 万里 福島工業高等専門学校, 一般教科(英語), 教授 (70280344)
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Keywords | 劇場閉鎖 / James Shirley / 王政復古 / manuscript / チャールズ朝演劇 |
Research Abstract |
本研究は、チャールズ朝に活躍した劇作家ジェイムズ・シャーリーの最後の戯曲である『宮廷の秘密』の手書き原稿と出版テキストとの比較を行い、劇作家の執筆活動を研究することを目的としている。さらに、劇場閉鎖後の劇作家、出版業界、劇団の関係にも光をあてることを目的としている。1642年の劇場閉鎖の年に執筆されたこの作品は、上演する機会を失い、手書き原稿として残されているが、その一方で、王位不在の時代、1653年にシャーリーの他の作品と一緒に、ハンフリー・モーズリーによって出版されてもいる。 オックスフォード大学ウスターカレッジにおいて、『宮廷の秘密』の手書き原稿に直接あたり、滞在期間内で可能な限りテキストを解読し、出版テキストとの比較を行なうとともに、加筆削除修正部分を細かく分析した。手書き原稿は、出版テキストに比べて、完成度が高く、主役の王侯貴族に加えて、主従関係にも重点がおかれ、身分の低い者に名前がつけられ、セリフが割り当てられている。今年度は、召使のペドロに注目して比較を行い、手書き原稿にはペドロの人間性とドラマがあり、出版テキストには存在しないことをテキストの分析から明らかにし、東北英文学会で口頭発表を行った。 その一方で『宮廷の秘密』の直前に執筆された作品『姉妹たち』について論文発表を行った。王党派に身を置きながらも、観客の共感と笑いを取ることに秀でていた作家が、本物の公爵よりも偽物の公爵を生き生きと描いていることに注目し、1642年の劇場閉鎖の直前には、シャーリーが宮廷よりも民衆側に立って作劇していることを検証した。
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Research Products
(2 results)