2011 Fiscal Year Annual Research Report
ジェイムズ・シャーリーの『宮廷の秘密』の手書き原稿と出版テキストとの比較研究
Project/Area Number |
21520308
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Research Institution | Fukushima National College of Technology |
Principal Investigator |
石原 万里 福島工業高等専門学校, 一般教科(英語), 教授 (70280344)
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Keywords | 出版 / ジェイムズ・シャーリー |
Research Abstract |
本研究は、チャールズ朝に活躍した劇作家ジェイムズ・シャーリーの最後の戯曲である『宮廷の秘密』の手書き原稿と出版テキストとの比較を行い、劇作家の執筆活動を研究することを目的としている。さらに、劇場閉鎖前後の劇作家、出版業界、劇団の関係にも光をあてることを目的としている。今年度は、手書き原稿とテキストとの比較に加えて、出版業者と劇団の関係から、出版テキストの成り立ちについて、焦点をあてた。 前年度に引き続き『宮廷の秘密』の手書き原稿と出版テキストとの比較を行ない、加筆削除修正部分を細かく分析した。手書き原稿に描かれた召使のペドロの人間性とドラマが、出版原稿からは消えてしまう事や、侍女たちの人数が減らされる事で、出版テキストの方が、主侯貴族である主要人物にのみ重きが置かれることを考察した。 その一方で、喜劇『籠の中の鳥』(The Bird in a Cage,1633)の出版時の事情についての考察を行った。この作品は、出版に際し、タイトルが変更され、作家の献辞が添えられている。17世紀前半ピューリタンは芝居を堕落の源として攻撃していたが、パンフレット作家ウィリアムプリンはそれに加えて女性が舞台に上がることを糾弾し、それが仮面劇に参加した王妃ヘンリエッタ・マライアへの誹謗中傷とみなされ、投獄され「籠の中の鳥」の状態にあった。作品において、女性達が塔に閉じ込められていたり、その塔に鳥籠が送られてきたり、「籠の中の鳥」という言葉には、何重にも意味がかけられているものの、タイトルを「籠の中の鳥」に変更し、プリンへの皮肉に満ちた献辞を添えるシャーリーは、明らかにピューリタンに対して挑戦状を送っている。作家シャーリーと出版業界の密接な関係がわかる。
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Research Products
(1 results)