2010 Fiscal Year Annual Research Report
ボードレールからゾラへ、美術と文学における「モデルニテ」概念の継承と変容
Project/Area Number |
21520328
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
吉田 典子 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (20201006)
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Keywords | ゾラ / ボードレール / 美術批評 / モデルニテ / マネ |
Research Abstract |
本研究の目的は、ゾラがボードレールから受け継いだものを明らかにすると同時に、ゾラが自身の批評活動および創作活動において、どのように同時代的な関心を推し進めていったのかを明らかにすることである。 マネは、ボードレールとゾラを繋ぐ重要な画家である。本年の具体的な成果は、ボードレールとマネ、およびゾラとマネの関係を扱った3本の論文にまとめられる。まず、マネの《テュイルリー公園の音楽会》(1862)に関する最初の論考では、マネがタブローの左側に描いた、ボードレールを含む芸術家や友人の集団に着目することで、エッチングやジャポニスム、アカデミーに代わる芸術家たちの「協会」組織など、1862年当時のマネの美学的・政治的関心を明らかにした。また、2番目の論考では、曖昧なままに残されているタブローの中心部分の形象を、形式論的かつ社会史的観点から分析し、マネのナポレオン3世への批判と、ボードレールとオッフェンバックという2人の芸術家によって、同時代の社会文化を表象しようとする意図を読み解いた。これまでの研究では、ボードレールはマネを十分に理解していなかったとする考えが根強かったが、本論は彼らの関係の深さを論証するものであり、ボードレールの「モデルニテ」をマネは完全に共有していたことを示すものである。また、《テュイルリー》の図像分析は美術史研究においても、新たな知見をもたらすものである。 他方、ゾラの小説『居酒屋』(1877)とマネの絵画《ナナ》(1877)に関する論考では、従来、ゾラの小説『ナナ』(1880)と比較されるのが常であったマネの絵は、『居酒屋』第11章に基づいて制作されたものであることを具体的なテクストとイメージの相関によって論証するとともに、マネの《ナナ》が1877年のサロンに落選した理由について,1865年の《オランピア》のスキャンダルと比較しつつ考察した。ここでもマネを仲介としたボードレールとゾラの関係が認められる。
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Research Products
(4 results)