2011 Fiscal Year Annual Research Report
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21520329
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
三野 博司 奈良女子大学, 文学部, 教授 (90117979)
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Keywords | フランス文学 / アルベール・カミュ |
Research Abstract |
1)「平成23(2011)年4月30日、著書『カミュ「異邦人」を読む-その謎と魅力』(彩流社)の増補改訂版を刊行した。第3部として「テクストの外部を読む-カミュと異邦人」をあらたに加えた。とりわけ『幸福な死』から『異邦人』の執筆にいたるカミュの作家としての歩みを詳細に跡づけた。 2)平成23(2011)年12月、単著論文、「カミュ、異境の正午(2)」(外国文学研究、第30号、奈良女子大学文学部外国文学研究会)を発表した。ここで扱ったのは、『幸福な死』以降の不条理の作品群(『異邦人』『シーシュポスの神話』『カリギュラ』『誤解』)、そして反抗の作品群(『ペスト』『戒厳令』『正義の人々』「『反抗的人間』)である。来年度発表の(3)において『最初の人間』を取り上げる予定である。 3)平成23(2011)年11月5日、パリ第3大学において開催された国際カミュ学会理事会に出席し、「3・11」と『ペスト』についての報告を行った。また同日午後に開催されたプロコープ・カミュにおける『正義の人々』に関する講演にも出席し、カミュ研究者と意見交換を行った。 4)平成25(2012)年、アルベール・カミュ生誕100年の記念の年に刊行を目指して執筆中の『カミュ、太陽の現在』の原稿執筆作業を進めた。『幸福な死』から『最初の人間』に至るカミュの歩みを、個々の作品分析を通じて明らかにする試みであり、400字詰め原稿用紙に換算して600枚程度の草稿を書き上げた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カミュの作家活動のはじめと終わりにある2つの作品『幸福な死』と『最初の人間』についての研究を真に意味あるものとするためには、カミュの全作品についての分析・考察が必要である。この作業を二つの分野で行った。一つは『外国文学研究』(奈良女子大学外国文学研究会)に発表した「カミュ、異境の正午」(1)および(2)であり、もうひとつは2013年カミュ生誕100年を記念して刊行予定の『カミュ、太陽の現在』の草稿執筆である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、当初の方針を拡大する形で進んでいる。『幸福な死』と『最初の人間』のみならず、カミュの全作品の読み直しと分析を通じて、21世紀におけるカミュの文学と思想のもつ意味を探る方向へと進んでいる。とりわけ「3・11」以後カミュの『ペスト』が広く読まれた事実などをも考慮し、カミュの文学の持つ今日的意義について考察を深める。
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Research Products
(2 results)