2010 Fiscal Year Annual Research Report
近世フランス文学における自己言及性の諸様態とその射程
Project/Area Number |
21520336
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
石川 知広 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (50145645)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大久保 康明 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (70168897)
小川 定義 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (40268967)
藤原 真実 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (10244401)
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Keywords | 仏文学 / 仏語統辞論 / 自己言及性 / 近世 |
Research Abstract |
・言語統辞論の研究においては普遍的構造の把握が重要であるとの観点から、欧米語とは異質の文法構造を有すると考えられる日本語(上代語)を取り上げ、統辞構造の自己言及的様相に着目しつつ実例に基づいた分析を行った(小川)。 ・『エセー』に見られるモンテーニュのエクリチュールと身体性の関連について、書く主体の自己言及性の観点から研究を進めた。モンテーニュのエクリチュールの独異なありようは、言語の底に沈められた豊饒な身体の響きを自ら反響させる形で成立するものであり、そこで語る「私」とは、言語の主語=主体であると同時に、今・ここに生起する書く身体と読む身体の結節点として、予め読書行為の間主観性を開く場であることが把握できた(大久保)。 ・フランス古典悲劇、とりわけラシーヌ悲劇における自己言及性の観点から、主要な作品の分析を行った。その結果、ラシーヌ悲劇の根底に強固な神話的構造があることが改めて確認できた。しかしまた、その構造は同時に、自己=運命を対象化し制御しようと努めながらも結局は完遂できない人間の有限性が自己言及的に表出されたものであり、神話からの自由をも内包すること、いいかえればラシーヌ悲劇は神話の神話自体による超克であることが明らかになった(石川)。 ・18世紀小説の展開の中でマグダラのマリアの形象(脆く女)が演じた役割に焦点を当てつつ、シャール、プレヴォー、ディドロの作品分析を行った。その結果、キリスト教絵画における特権的表象のひとつが、シャールによって文学的エクフラシスへと転移され、次いでプレヴォー、ディドロへと継承される中で、ジャンルとしての小説が次世期の飛躍を準備してゆく道程の一端が捉えられた。この重層的本歌取りこそ、自己言及性によって高度化してゆく文化の本質を物語るものである(藤原)。
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Research Products
(2 results)