2010 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツにおける大衆的文学・芸術の発展―ベルリンの大衆と芸術
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21520355
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
宇佐美 幸彦 関西大学, 文学部, 教授 (00067737)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 裕子 関西大学, 文学部, 教授 (30278600)
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Keywords | ドイツ文学 / 大衆芸術 |
Research Abstract |
平成22年度においては、宇佐美幸彦がグスタフ・キューン社発行のビルダーボーゲンの特徴について、佐藤裕子がハインリッヒ・ツィレの作品の特徴について研究し、それぞれ論文として研究成果をまとめた。宇佐美は、19世紀中葉のビルダーボーゲンが、ロマン主義的な詩のテクストを掲載するケースが多いが、このテクストを視覚的に提示した画面においては、きわめてビーダーマイアー的で画面とテクストが一致していないことを明らかにした。多くの画面は小市民的な平穏な暮らしを肯定するものである。これは本来、こうした俗物性を否定するロマン主義の本質とは異なるものである。しかし中には女性の解放など社会に対して批判的な部分も潜在的に含む作品もあることも注目すべきであると指摘した。佐藤は、ツィレの画集『通りの子供たち』に収められている、部屋の中の死をモチーフにした2作品を取り上げ、作品の中の絵画的な情報とWitzとして絵に添えられたテクストの情報を分析、解釈した。今日ではツィレの作品の人間的でユーモラスな側面のみがノスタルジーと相まってツィレの作風として語られることが多いが、実際のところ、ツィレの作品には底知れぬ人生の暗部を暗示させるものや残虐性を宿したものも少なくない。そのユーモアは時に極めて鋭い風刺性や攻撃性を帯び、市民社会のモラルやタブーに対して挑戦的でさえある。佐藤の論文は、ツィレの作品分析することにより、貧しく非人間的な状況で生きていかざるを得ない人々を作り出した、当時の社会に対する画家の辛辣な告発を明らかしようと試みたものである。
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Research Products
(2 results)