2011 Fiscal Year Annual Research Report
環太平洋における東アジア系ディアスポラ戦後文学の関係史的研究
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21520363
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
李 孝徳 東京外国語大学, 大学院・総合国際学研究院, 准教授 (90292721)
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Keywords | 移民文学 / ディアスポラ / 人種主義 / 東アジア / 在日朝鮮人 / 在日朝鮮人文学 / 思想史 / 宗教史 |
Research Abstract |
本研究の目的は,これまで各国語・各国民文学においてマイノリティ文学として周縁化されてきた、環太平洋地域における東アジア系ディアスポラ(日系、朝鮮系、沖縄系)の戦後文学作品を、今日のグローバルな状況下にある先進諸国では、むしろ確固たるジャンルとなりつつある「移民文学」や「ディアスポラ文学」として読み直すことで、今日的な意義を歴史的かつ理論的に評価し直しつつ、そのためのアプローチ、記述方法、理論的な枠組みを新たに提示しようとするものである。 当該年度にあっては、神奈川県神奈川県中郡大磯町在住の在日朝鮮人文学者である高史明氏にインタビューできる機会を得たので、前年度に計画していた沖縄系ディアスポラ文学に関して立てていた調査計画をいったん中断し、在日朝鮮人文学成立史の調査・研究に多大な寄与が行える高氏へのインタビューに継続的に注力することにした。そのインタビューの理解や分析に必要な在目朝鮮人の歴史資料や文学作品一般の収集とデータを処理する機器が必要であったため、予算執行が物品費に集中することになった。 成果としては、私が編者となり、哲学者の高橋哲哉氏と高史明氏との対談を通じて高氏の『月愛三昧-親鸞に聞く』(大月書店、2010年)を読み解くことを行った(李孝徳編、高史明・高橋哲哉『いのちと責任』大月書店、2012年)。高齢の高氏から個人史を通じて提示された様々な諸問題を収めることのできた本書は、植民地期から今日にいたるまでの日本社会を東アジアの観点から見た、在日朝鮮人とその表現に関する貴重な証言となっている。それ以上に、高史明氏が文学として対象化してきた在日朝鮮人の諸問題が、植民地期はもちろん、それ以前の古代にまで遡る「日本」の東アジアにおける地政学的立ち位置が宗教(仏教)に関わる諸問題に連結し、世界史的関係史の中に置かれていることを明らかにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
神奈川県神奈川県中郡大磯町在住の在日朝鮮人文学者である高史明氏にインタビューできる機会を得て、在日朝鮮人文学の調査・研究に注力したため、前年度に計画していた沖縄系ディアスポラ文学に関する調査計画をいったん中断することになったため。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の「現在までの達成度」に記したように、沖縄系ディアスポラ文学の調査・研究に着手した上で、本研究全体の総括を行う。
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Research Products
(1 results)