2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520370
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
加藤 國安 Nagoya University, 文学研究科, 教授 (70142346)
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Keywords | 文章軌範 / 江戸・明治漢文 / 連続性 / 明清の古文 / 頼山陽 / 齋藤拙堂 / 正岡子規 / 簡野道明 |
Research Abstract |
国会図書館で江戸後期から明治期にかけての日本漢文の調査を行い、明治期の人々にとって日本漢文がいかに重要勉学の対象であったかについて研究を行った。「大東世語」「慎思録」「初学知要」「先哲叢談」「近世叢語」等の漢籍、また雨森芳洲・頼山陽・齋藤拙堂・安井息軒らの文集をもとに考察し、それが明治の簡野道明編漢文教本にどのような形で反映したかを具体的に調べ、その成果を「近代日本版『文章軌範』編集の情熱」にまとめた。また国立公文書館所蔵の昌平坂学問所漢籍(内閣文庫)調査をし、斉藤拙堂が閲覧・引用した散文資料を確認し、それを基に拙堂の読んでいた文献の割り出し作業を行った。ことに拙堂が他に先駆けて清代初期の古文に強い関心を寄せていたことが明確になり、それが頼山陽の注目を引いたこと、また門弟・三島中洲の明治期における明清文称揚の一因となったこと、そしてそれが後には青木正児『清代文学評論史」へと展開していくという流れを掴んだ。その成果は今年の秋頃発表する予定である。また従来未公開だった法政大学子規文庫蔵『重刊杜甫全詩集』(明の稀少本)の調査(前半部のみ)や、『漁洋詩話』『精華録訓纂』の読解作業を進めた。さらに同蔵「随録詩集」の出典調査を行い、巻頭の数首が「先哲叢談」から採られたものであることを突き止めた。その成果は「子規写本「随録詩集」と「先哲叢談」」としてまとめられ、現在印刷中である(『新しい漢字漢文教育』第50号)。 これらの検討により、明治期の人々が近代西洋の文学とは異なる形で、東洋の伝統的な人間観や自然観の継承的発展を基盤とする、日本独自の近代文学を探求した経緯の一端を明らかにすることができた。
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