2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520376
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小川 恒男 広島大学, 大学院・文学研究科, 教授 (20185507)
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Keywords | 中国古典詩 / 明治 / 東京 / 郁曼陀 / 東京雑事詩 |
Research Abstract |
本研究は、日本を訪れた中国人が中国古典詩というスタイルで明治の東京を描いた作品群を研究対象とし、それらの主題・内容・表現などを総合的に整理・分析し、その集成を目的とする。郁曼陀、蘇曼殊、郁達夫の作品群を中心とする予定だが、平成22年度は、前年度に引き続いて、明治40年前後の東京を描いた郁曼陀「東京雑事詩」を中心に、1)資料の収集と整理 2)作品の読解 3)表現面・創作面からの研究を計画し、同時に蘇曼殊、郁達夫関連資料の収集に努めた。 平成22年度にまとめることのできた具体的な研究成果として挙げられるものに、「郁曼陀『東京雑事詩』訳注(二)」がある。これは、上記研究計画の2)の成果に該当し、集成を目的のひとつとする本研究全体の基幹となるものである。できるだけ詳細な訳注の作成を心掛け、一方で明治末の社会情勢、風俗、事件などを調査しながら訳注に反映させるとともに、郁曼陀が詩に用いた言葉の来歴をひとつひとつ丹念に調査した。結果として量的には其六から其十までしか扱うことができなかったが、上記研究計画の3)の基礎となる作業とすることができた。 現段階では、郁曼陀の詩語が多く『佩文韻府』に由来しつつ、唐詩よりも宋詩の表現の方が影響がより大きいことが確認できたと思う。これは彼が受けた古典教育がかなり正統的なものであったことを証明するとともに、日本に於ける明治詩壇の好尚が反映したのではないかと考えられる。また、詞から白話語彙を援用する場合が予想以上に多いことも確認できた。もちろん和製漢語もしばしば見られることから、彼の詞藻は大きく三つの層からなると予想される。 近年、中国に於いて、清末民国初年関連書籍が大量に整理・出版されるようになった。その中に本研究で取り扱わなければならない資料も含まれており、順次入手に努めている。
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Research Products
(1 results)