2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520376
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小川 恒男 広島大学, 大学院・文学研究科, 教授 (20185507)
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Keywords | 中国古典詩 / 明治 / 東京 / 郁曼陀 / 東京雑事詩 |
Research Abstract |
本研究は、日本を訪れた中国人が中国古典詩というスタイルで明治の東京を描いた作品群を研究対象とし、それらの主題・内容・表現などを総合的に整理・分析し、その集成を目的とする。郁曼陀、蘇曼殊、郁達夫の作品群を中心とする予定だが、平成23年度は、前年度に引き続いて、明治40年前後の東京を描いた郁曼陀「東京雑事詩」を中心に、1)資料の収集と整理 2)作品の読解 3)表現面・創作面からの研究を計画し、同時に蘇曼殊、郁達夫関連資料の収集に努めた。 平成23年度にまとめることのできた具体的な研究成果として挙げられるものに、「郁曼陀『東京雑事詩』訳注(三)」がある。これは、上記研究計画の2)の成果に該当し、集成を目的のひとつとする本研究全体の基幹となるものである。できるだけ詳細な訳注の作成を心掛け、一方で明治末の社会情勢、風俗、事件などを調査しながら訳注に反映させるとともに、郁曼陀が詩に用いた言葉の来歴をひとつひとつ丹念に調査した。結果として、量的には其十一から其二十までしか扱うことができなかったが、上記研究計画の3)の基礎となる作業とすることができた。 この段階で、江戸末期から明治初年に刊行された漢文戯作文学、特に寺門静軒『江戸繁昌記』、成島柳北『柳橋新誌』の郁曼陀の詩作に対するが、意外に大きかったことが次第に明らかになってきた。つまり、郁曼陀の作品は中国古典詩を基礎としつつ、日本の漢学の成果を柔軟に受容していたのである。そこで、今後は日本の漢文戯作文学にまで調査対象を広げ、明治の東京を描いた中国詩の特徴を究明していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東京を描いた中国詩の訳注作成が計画よりもやや遅れている。これは、註を施すに当たり、詩に用いられたひとつひとつの語の由来を確認する作業を必要とするためである。計画当初は語の由来は中国の古典を調査対象としていたが、調査の過程で日本の漢文戯作文学も調査対象に加える必要が生じたので、さらに時間を要することになった。
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Strategy for Future Research Activity |
語彙の由来を調査することは、詩人がどのような人々を読者として想定していたかという問題と深く関わる。また、明治の日本を訪れた中国人がどのようにして日本や東京の様子を知り得たのか、彼らの情報源とも関わるので、どうしても避けて通ることのできない作業である。これまでと同じように訳注の作成に努めていきたいと考えるが、幸いに調査対象がかなり絞られてきたので、これまでよりもペースを上げることができると思う。
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Research Products
(1 results)