2009 Fiscal Year Annual Research Report
超域する「異界」―異文化研究・国語教育・エコロジー教育の架け橋として―
Project/Area Number |
21520383
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
大野 寿子 Toyo University, 文学部, 准教授 (20397491)
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Keywords | 伝承文学 / 異界 / 魔(女) / エコロジー / 自然 / 小人 / 森 / 怪異 |
Research Abstract |
本研究は、研究代表者(大野寿子)と4名の連携研究者(竹原威滋、千艘秋男、中山尚夫、野呂香)と、2名の研究協力者(早川芳枝、池原陽斉)の7名に、新たに連携研究者4名(渡辺学、石田仁志、山本まり子、木村一)を加え計11名で構成される。初年度は研究会を3回開催し、各々の専門の立場から「異界」をテーマとした研究発表を行い、共同研究ベースとしての共通理解を深めた。第一回研究会(8月6日、於東洋大学)では、竹原が「異界が人間界に超域する時空間-世界の伝承説話『瘤取りオニ』をめぐって-」という題目で比較民話学の立場から研究発表を行い、ヨーロッパ伝承文芸では「小人」に与えられている機能を日本の伝承文芸では「オニ」が担う等、文化圏による表象の相違はあるものの、「異界」という概念は普遍的であるという理解に至った。第二回研究会(9月14日、於東洋大学)では、山本が「音楽における異界-異形のもの、異空間、超域の音楽表現-」という題目で発表し、異界の音楽表現について、とりわけドイツ・ロマン主義音楽を中心に解説が成された。誤訳における「魔王」のイメージ定着や楽劇『ヘンゼルとグレーテル』の原作(グリム童話)との相違等に焦点が当てられた。第三回研究会(12月12日、於東洋大学)では二人のゲストスピーカーの研究発表〔溝井裕一氏(関西大学東西学術研究所非常勤研究員):「魔術師ファウスト-悪魔と旅する近世ドイツ-」、松岡芳恵氏(東洋大学大学院):「日本近世文学における"怪異"の変遷-化け物(妖怪)・百物語を中心に-」〕を拝聴し、西洋と東洋の異形のものの特性、および、異界との関わり方(コミュニケーションのとり方)のドイツと日本の文化に根ざした独自性と普遍性を確認し、「異界」の「超域」という現象の捉え方に共通理解を持つ事ができた。これらの研究発表は次年度に企画予定のシンポジウムに繋がる布石となった。
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Research Products
(3 results)