2010 Fiscal Year Annual Research Report
超域する「異界」-異文化研究・国語教育・エコロジー教育の架け橋として-
Project/Area Number |
21520383
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
大野 寿子 東洋大学, 文学部, 准教授 (20397491)
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Keywords | 伝承文学 / 異界 / 魔(女) / エコロジー / 自然 / 小人 / 音楽 / 怪異 |
Research Abstract |
本研究は、研究代表者(大野寿子)と10名の連携研究者(竹原威滋、山田利明、千艘秋男、中山尚夫、野呂香、山本まり子、渡辺学、石田仁志、木村一、溝井裕一)と、3名の研究協力者(早川芳枝、池原陽斉、松岡芳恵)の計14名で構成される(平成22年度より連携研究者2名、研究協力者1名追加)。共同研究2年度目である平成22年度は研究会を初年度同様3回開催し、各々の専門の立場から「異界」をテーマとした研究発表を行い、共同研究ベースとしての共通理解を深めた。第四回研究会(2010年6月6日、於東洋大学、13時~17時半)では、研究協力者池原が「「異界」の意味領域」という題目で、現代日本の出版物における「異界」という語の意味範囲の、個々の事例、使用例からの調査報告を行った。「異界」という語が、「他界」等の民俗学分野における用語の意味範囲を拡大かつ継承しつつも、実際は1970年代末に日本語として登場した、the other world等の翻訳語である可能性が高いことを確認した(参加者12名)。 第五回研究会(2010年9月25日、於東洋大学、15時~19時)では、北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院教授高橋吉文氏をゲストスピーカーとしてお招きし、[漱石越境-おむすびころりん、おくびもころりん」という表を拝聴した。源氏物語、夏目漱石作品、さらに西洋絵画等における「異界」表出の仕掛けには、「赤」、「首(あるいはそれに類するの)が落ちる」等の定式化されたルールがあることを学んだ(部外者も含め参加者18名)。第六回研究会(2011年2月17日、於東洋大学、17時~20時半)では、研究協力者渡辺と山田がそれぞれ研究発表を行った。渡辺の研究発表「「異界」の思想-メディア、テクノロジー、言語に触れて-」は、現代日本と現代ドイツにおける着語と社会との関わりにおける「異界」のあり方を、「ゴスロリ」「コスプレ」等の個々の若者文化(社会現象)に基づき考察したものであり、異文化理解の新しいあり方をぶことができた。山田の研究発表「鬼(き)を責める」は、古代中国道教思想において病気等をもたらすとされた「鬼」(き)と、それを封じ込めるために存在したとされる「劾鬼」という現象について説明し、「該鬼」現象がおそらくは仏教との混交により衰退していく過程を文献学的見地から考察したものであり、東洋における異界表象の一つである「鬼」をめくる死生観のあり方を学んだ(部外者も含め加者20名)。
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