2010 Fiscal Year Annual Research Report
北奥羽方言におけるアイヌ語アクセント型の残存の蓋然性についての実証的研究
Project/Area Number |
21520443
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
板橋 義三 九州大学, 大学院・芸術工学研究院, 教授 (50212981)
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Keywords | 北奥羽方言 / アイヌ語のアクセント / 方言アクセント型の変化 / 基層 / 危機に瀕した方言 |
Research Abstract |
本年度は青森県沿海方言に関する詳細な語彙、アクセントの調査を行った。予定どおり、各地域3名の協力者にお願いし、了承を得た。そのように少ない協力者数であっても年齢や地域性というほぼ確実な質的不変化要素から、2か所(尻屋地区と岩屋地区)異なったところで最終的に合計6名の協力を得た。調査した語と談話のアクセントのデータベースから行った分析結果を報告書の一部としてまとめ、国内・国際学会で口頭発表を行った後、論文として著す予定にしていたが、現時点では少し遅れぎみである。 予定した調査地風調査期間と協力者は(1)下北郡東通村尻屋(調査期間:平成22年8月28~29日)、(2)下北郡東通村岩屋(平成22年8月30日)における協力者としてその土地生え抜きの古老(80歳以上)をそれぞれ3名ずつ紹介してもらい、合計6名の協力者を得て調査した。尻屋地区と岩屋地区は距離的には5km程度離れていないが、地理的に地形的に隔たっている地区であり、歴史的にはも方言的にも実際には隔離させていた地域である。また岩屋地区は海岸沿いであり、アイヌ人がつい最近まで居住していた洞窟などもあり、津軽海峡をへだてて対岸は北海道であり、その対岸が明瞭に見え、船による行き来はあまり時間を要さなかったことがわかる。その地点での調査は非常に有用であり、今回の調査ではアイヌ語のアクセント型の変化、またはその影響力の分布も見えてくる可能性がある。 調査する語彙リストの基礎語彙は1拍語から3拍語まで200項目程度(名詞、動詞、形容詞とそれぞれの品詞の単独形と接続形)のアクセントだけに焦点をあわせ、高感度マイクで収録した。次に語彙項目を発音してもらった後に、対話や面談を行い、高感度マイクで録音し、文レベルに渡り調査した。今回、協力者は役場、特に教育委員会にお願いし、3日間に渡ってアクセント、談話の細部まで収録、録音した。現段階ではこの基礎語彙200語と自由談話の分析を行っており、まだ十分な結果が出ていないが、アイヌ語の影響力の大きさが分かるとともに、その分布が明確になると考えられる。その成果はこの秋の国内学会で発表する予定である。
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