2011 Fiscal Year Annual Research Report
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21520484
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Research Institution | Wako University |
Principal Investigator |
福島 みどり (天野 みどり) 和光大学, 表現学部・総合文化学科, 教授 (10201899)
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Keywords | 他動構文 / 各助詞ヲ / 対格 / 接続助詞的ヲ / 語用論 / 構文 / 類推 / 文脈 |
Research Abstract |
本研究では、これまで作成してきた話しことば資料に基づき、逸脱的特徴を持つ種々の他動文に関する総括的な考察を行った。考察の結果は著書『日本語構文の意味と類推拡張』にまとめ公刊した。 具体的には、これまで収集してきた実例を用いながら(1)接続助詞的なヲの文(2)状況のヲの文(3)とがめ立てを表す「何ヲ」文と、(3)と似た意味を表す逸脱的な「何ガ」文の意味がどのようなものであり、その意味が理解されるプロセスがどのようなものであるかを論じた。これらの意味理解には、構文類型の持つ意味が重要な役割を果たし、また、その構文の意味をペースとした類推が行われることを論じた。これまで文法論の分野であまり研究されてこなかった逸脱的な特徴を持つ文を、文脈・状況の中では相応の意味を表す日本語の文であると位置づけ、語用論の成果を援用しつつ、文法論の立場からの説明を試みたことになる。 本研究は現代日本語の他動構文を中心的な考察対象としたが、特に接続助詞的なヲは、中古期に一度成立したものとされていることから、現代語と同様の分析が中古語に関しても適用できるか試みた。今後本研究を日本語の変化の諸相も視野に入れた他動構文の全体像を研究するものへと進めるための糸口とした。 また、例えば本研究における接続助詞的なヲに関する考察の結論、すなわちこのノヲのヲは逆接の接続助詞ではなく、「~ヲやめる」などの他動構文に見られるヲと同様に格助詞としての機能を果たすという結論は、今後類似したノガの分析に適用し、日本語の補文標識辞と言われるノの研究にも有益な提案を行えるものと位置づけられる。このように、他動構文以外にも本研究の成果が展開していけるものと考える。
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Research Products
(2 results)