2009 Fiscal Year Annual Research Report
仮名成立史から見る万葉集仮名書歌巻の孤立性と平仮名への連続性の研究
Project/Area Number |
21520487
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
乾 善彦 Kansai University, 文学部, 教授 (30193569)
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Keywords | 日用の仮名 / 万葉集 / 木簡 / 文学的な仮名 / 歌の仮名書 / 三宝絵 / 播磨国風土記 |
Research Abstract |
本研究の目的は、万葉集の仮名書歌巻の仮名使用を、さまざまの文献と比較し、それを仮名成立史の中に正当に位置づけることで、平仮名成立の過程にも重層性のあることを指摘し、仮名成立のシステムを明らかにするものであるが、本年度は、とくに万葉集正訓字主体歌巻の仮名の使用状況を調査すし、一字一音の仮名については、表語的な用法もある一方で、いわゆる基層の仮名が中心となっていることを明らかにした一方で(調査結果は未公表)、ウタが書かれた木簡の仮名の使用状況を調査して、万葉集との差異について、その位相差に注目すべきことと、木簡の中にも万葉集に近いものから平安時代の平仮名に近いものまで、資料によって相当の差異があることを明らかにし、その底流にある基層の仮名の存在を想定した(「仮名の位相差」、「歌表記と仮名使用」、「歌木簡の射程」の諸論文)。また、同時代資料としての『播磨国風土記』の地名に用いられた仮名の多様性について、地名の読みがその説話と微妙にかかわって確定しがたいことを明らかにし(「地名起源説話と地名表記」)、平安時代の使用としては、関戸本『三宝絵』、東大寺切の仮名使用の調査をおこなって、仮名で書くことが文体に及ぼす影響について、漢文訓読との関係に注意すべきことを明らかにし、和漢混淆文と仮名との関係を考える足がかりをつけた(「表記体の変換と和漢の混淆」)。
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