2011 Fiscal Year Annual Research Report
中国語母語話者のための漢字音教材開発 -入声音を含む漢語を中心に-
Project/Area Number |
21520522
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
黒沢 晶子 山形大学, 基盤教育院, 教授 (50375333)
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Keywords | 漢字音 / 入声音 / 北京語 / 台湾語 / 広東語 / 教材 / 母語の干渉 |
Research Abstract |
第3期の調査から得られた主要な知見は次の通りである。 1 中国語で入声音を残す方言の字音調査:台湾語において特徴的なのは、声門閉鎖音で終わるとされる字音である。閉鎖がごく弱まり、母音終わりのように聞こえるだけでなく、音響分析では(例:踏tah8が達tat8に対し)母音部分が長くなっており、質的に全く異なる音に変化しつつある可能性を示している。広東語には韻尾-p、-t、-k 相互の区別が相対的によく残っている。韻尾は、破裂しないため英語話者や日本語話者の耳には-tと-kの違いがほとんど聞き取れない。しかし、広東語母語話者は「八(baat1)」と「百(baak1)」等もそれぞれ異なる音と認識していることがわかった。 2 学習者調査(入声音を含む日本語漢語の音読):入声音を残す方言母語には、日本語字音の習得にプラスではなくマイナスに作用する側面もあると推測される。台湾語・広東語母語話者に目立つ誤用に、「学業(がっぎょう)」、「出題(しゅっだい)」「実利(じっり)」のように、促音化しない環境でも促音化させることがある。それらの方言では、日本語と異なり、入声韻尾が後続音によって変わらないこと等から、おそらく母語(方言)の干渉と考えられる。 3 方言の維持:若い世代では、地域差が見られる。方言は通常、文字で表すことが少ないため、文字面と字音がすぐには結びつかない。しかし、台湾語母語話者に較べ、広東語母語話者は、携帯メール、チャット、ブログ、ソーシャル・ネットワーク上の読み書きに日常的に方言を取り入れており、単漢字から方言字音へのアクセスも速い。 また、試用版の教材を作成した。教材は、次の点に留意した。 (1)意識化のステップとして、日中台広の字音を対照させる。 (2)「聞いて書く」「発音する」作業を含む練習課題を設ける。 (3)なじみのある語彙の読みの規則をなじみの薄い語彙への応用に発展させる。
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Research Products
(1 results)