2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520663
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
後藤 雅知 Chiba University, 教育学部, 准教授 (50302518)
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Keywords | 近世 / 天草 / 寒天 / 漁業 |
Research Abstract |
本年度は、天草採取地域の事例として伊豆稲取村の史料調査を、また寒天生産地域として丹波寒天生産地の一つである木代村の史料調査を実施し、それぞれでの史料収集を行うことができた。その結果次のような成果があった。 1稲取村の天草に関しては国立歴史民俗博物館所蔵の絵巻に生産過程が記されていることが知られるが、この絵巻に描かれた、沼津藩役人が天草を回収した会所などの場所比定が今回の調査ですすみ、天草生産の具体像がかなり明らかになってきたものと考えられる。 2大阪市立大学学術情報総合センターに所蔵されている「摂州能勢村方記録」という史料が寒天を生産した木代村に関する史料であることがわかり、その読解に努めた。この村で経済的な発展を遂げたと推定される宇津呂一族の一家である三左衛門家は、紀州藩から寒天製作の依頼を受けて株立された丹波寒天仲間の一員であったが、嘉永期に起こった村方騒動で宇津呂一族が糾弾を受ける過程で、三左衛門家の寒天製作の中止が求められたことが明らかとなった。この事例からは、寒天製作では、村内の川縁で天草晒しが行われ、また天草の煮汁が田畑に流れ出すなど、村方百姓との紛争を惹起する要素があったことが明瞭に読み取れ、寒天製作の具体相が明らかとなった。また木代村には、猪子餅生産関係者、多田郷士階層、地縁的な三つの小集落など複雑な内部構造が存在したが、寒天製作も木代村の構造を複雑化した一つの要因と位置づけることが可能であることが判明した。
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