2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520663
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
後藤 雅知 千葉大学, 教育学部, 准教授 (50302518)
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Keywords | 近世 / 天草 / 寒天 / 漁業 |
Research Abstract |
本年度は、丹波寒天産地の中心である牧村や木代村に関する史料が、豊能町教育委員会に存在したので、その史料調査を実施し、膨大な史料を収集することができた。その分析などから、次のようなことがわかった。 1 紀州藩の寒天製作を,最初に一手に引き受けた牧村の黒田家は、現在の兵庫県にある多田院の御家人(多田郷士)を名乗る家柄であり、村内の名主を務める家柄とは異なった。こうした背景が有栖川宮との関係創出につながった可能性がある。 2 昨年同様、大阪市立大学学術情報絵合センターに所蔵されている「摂州能勢村方記録」という木代村に関する史料の読解に努めた。また豊能町教育委員会所蔵の古文書も、木代村や寺田村、切畑村など、寒天製作を行った村の実態を示す重要なものが多かった。こうした村々は、冬期には外気温が氷点下にまでなる、寒天製作に適した山間村落であり、山畑といった等級の土地が多かった。薪炭や林産物生産からの収入が多い村々であり、寒天製作に必要な燃料を供給できたことが明らかであろう。 3 これら古文書が残る地域の村々は、いずれも紀州藩の寒天製作を担った村々であり、北摂地域の寒天製作村々と位相を異にしたが、多田郷士層が村内に居住し、また村内が地縁的な小集落から成り立つなど、いずれも同様の特徴を持つ場合が見られる。北摂の村々との相違は、単に摂津国と丹波国とに分かれているという点だけではなく、村落構造においても検出できる可能性が見えてきたのではないかと考えられる。
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Research Products
(1 results)