2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520664
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
箱石 大 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (60251477)
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Keywords | 日本史 / 情報史 / 明治維新 / 戊辰戦争 |
Research Abstract |
本研究は、戊辰戦争期に維新政府が行なった情報・宣伝活動に関する史料を収集して、これに政治史的観点から分析を加えることを目的としている。本年度の研究成果は以下の通りである。 1.諸藩に対する情報・宣伝活動関係史料の収集と分析 仙台市民図書館所蔵の郷土資料のうち、戊辰戦争期に仙台藩が作成・配布した木版刊行物を調査した。これは、奥羽越列藩同盟が軍事総督に推戴した輪王寺宮入道公現親王の令旨を布告するためのものであり、維新政府に抗戦する側の情報・宣伝活動を示す史料として重要であることが確認された。 2.民衆に対する情報・宣伝活動関係史料の収集と分析 香川大学図書館所蔵の神原文庫資料のうち、戊辰戦争期における諷刺替え歌の歌詞を収載した摺物を調査し、トコトンヤレ節だけでも数多くの替え歌が作られ、その歌詞が出版されていることを確認した。さらに、新潟県立佐渡高等学校同窓会所蔵の舟崎文庫史料のうち、佐渡奉行所の地役人であった山西敏弥の手記「幕末遭難記」を調査した結果、奥羽越列藩同盟が占領・管理していた新潟の花街-古町において、新政府軍の進攻前にもかかわらず、既にトコトンヤレ節が流行していたという事実が判明した。また、京都市右京区(旧・京都府北桑田郡京北町)の山国隊軍楽保存会に、トコトンヤレ節を元歌とする「山国隊歌」が、現在でも伝承されていることを確認した。 3.外国人に対する情報・宣伝活動関係史料の収集と分析 国内所在史料では、鶴岡市郷土資料館所蔵の阿部正己文庫史料のうち、シュネル兄弟・ゲルトナー兄弟関係の文献史料を調査した。海外所在史料については、ドイツ・フライブルク連邦軍事文書館所蔵の戊辰戦争期におけるプロイセンと会津・庄内藩との秘密交渉に関する文書の分析を継続した。その成果は、日本学士院による日本関係未刊行史料調査事業(国際学士院連合関連事業)の一環として、日本学士院と東京大学史料編纂所が主催した「在外日本関係史料をめぐる国際研究集会」(2012年2月21日開催)において、研究協力者であるボン大学のペーター・パンツァー名誉教授と宮田奈々氏の報告により紹介され、研究代表者も、プロイセンが当初の方針を転換し、会津・庄内藩との交渉開始を決定していたという新事実を追加報告した。なお、この研究成果の一部を基に、NHK・BSプレミアムのテレビ番組「BS歴史館:発見!戊辰戦争幻の東北列藩・プロイセン連合」も制作された(2011年7月1日放送)。
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Research Products
(4 results)