2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520684
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
山本 和重 Tokai University, 文学部, 教授 (10200792)
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Keywords | 日本近代史 / 軍事救護・軍事扶助 / 徴兵制 / 兵事書類 |
Research Abstract |
近代日本では、国民が兵役という公的義務を履行することによって発生する、兵役義務者の失職やその家族の生活困窮への対応策を、軍事救護と呼称した。軍事救護は、公的義務履行と国民の生活権の問題、いわゆる公共性をめぐる問題について、日本近代史の経験から素材を提供するものであり、本研究はその作業の一環として、主に日中戦争期及びアジア太平洋戦争期における軍事救護政策の特質と実態の解明を目的とし、平成21年度は、主に以下の成果を得た。 1、軍事救護の実態把握のためには、町村レベルでの救護の実態を把握する必要があり、そのためには敗戦時に焼却を免れた町村兵事書類の残存状況の調査と、軍事救護法(軍事扶助法)による救護関係書類や、地域の軍事援護関係団体関係資料の分析検討が必要である。平成21年以降に新たに、長野県社村(現大町市)、長野県片桐村・赤向村(現中川村)の兵事書類の残存が明らかになったことから、残存状況の調査を実施し、概要の把握につとめた。兵事書類の焼却に関わる長野県の特殊性などが浮かびあがり、その調査内容は社会的にも注目され、信濃毎日新聞、NHK、朝日新聞などで報道された。 2、近代日本の軍事救護の特徴の1つとして、官公吏と一般国民の待遇格差かある。応召時における官公吏の待遇の実態を解明するため、府県の行政資料が比較的残っている新潟県(新潟県立文書館)の公文書の調査を実施した。新潟県総務部人事課「例規通牒書類」などの分析により、応召官公吏の特権的処遇の細部が明らかになりつつある。
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