2009 Fiscal Year Annual Research Report
昭和戦中・戦後期の日本の社会史と台湾―台湾人民衆の戦争体験と日本認識の記録化
Project/Area Number |
21520698
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
大谷 渡 Kansai University, 文学部, 教授 (80340644)
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Keywords | 日本史 / 台湾史 / 近現代史 / 社会史 / 陸軍看護婦 / 戦場体験 / ルソン戦 / 引揚げ |
Research Abstract |
本研究の目的は、近現代日本の社会史との関連で、台湾人民衆の戦争の記憶と体験を多角的かつ具体的に解明することである。本年度においては、従軍看護婦の出征など台湾人住民の動員についての調査を相当程度進めることができた。特に、台南陸軍病院からマニラに派遣された陸軍看護婦黄玉緞からの聞き取り調査による口述資料を手がかりに、日本各地からマニラに派遣された日本人陸軍看護婦で今も健在の方々をつきとめることができ、思わぬ成果を得ることができた。日本人と台湾人の記憶と体験を合わせて検討し、文字資料との照合による分析をとおして、彼女らの戦場体験、米軍収容所での体験、引揚げ等々の詳細を明かにし、これまで知られていない戦争の実相を解明した。 この成果を広く社会に発信する目的で、2010年3月13日に関西大学おいて「国際交流研究集会 65年目の証言 日本人・台湾人陸軍看護婦とルソンの戦場」を開催し、『研究報告集』を編集して来場者に配布した。研究集会の開催は、『毎日新関』2月25日付朝刊、『京都新聞』3月7日付朝刊、『読売新聞』3月11日付夕刊で報じられ、開催当日には会場で読売新聞の取材があり、翌14日付同紙朝刊に「元陸軍看護婦証言生々しく 関大で研究集会」の見出しで、学生・社会人の来場者180人と報じられた。『研究報告集』には、収集した写真を表紙と口絵に使用し、基調報告「問い続けたいあの戦争と平和について-日本人・台湾人陸軍看護婦とルソンの戦場-」(大谷渡)、研究報告「フィリピンにおける日米映画戦-『あの旗を撃て』の幻影-」(笹川慶子)、「戦前・戦中におけるフィリピンと台湾人」(卞鳳奎)の各論文と、史料紹介「陸軍看護婦門脇初代の戦場日記について」を収録した。当日会場では、2009年12月26日に台北において収録した黄玉緞のビデオを上映するとともに、収集した写真を映し出して解説した。研究集会は、参加者の好評を得て盛会であった。
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Research Products
(4 results)