2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520740
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
根津 由喜夫 Kanazawa University, 歴史言語文化学系, 教授 (50202247)
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Keywords | ビザンツ / 皇帝権 / 宗教と政治 |
Research Abstract |
本年度は、当初計画に基づき、11-12世紀においてビザンツ皇帝の霊性を称揚する装置に関して、とくに図像学資料を中心に分析、検討を加えた。具体的な考察の対象となったのは、コンスタンティノープル(現イスタンブール)の聖ソフィア聖堂南階上廊の皇帝肖像モザイクなどである。そのため、夏期に欧州に出張し、上記の検分を行った。その際には、あわせて、第4回十字軍以降に成立したビザンツ系亡命国家の首都であったトレビゾンド(現トラブゾン)や、コンスタンティノープルの中央権力と密接な関係を有した大貴族のパトロネージによる大規模な岩窟教会の遺構が残るカッパドキア地方にも足を伸ばし、それぞれの地域権力が残した図像学的な素材(教会や修道院の壁画、奉献者としての君主像など)の収集にも努めた。それらを、コンスタンティノープルの聖ソフィアの事例と比較すれば、ビザンツ全般に適用できる君主のイデオロギーの一般的特質や地域における、そこからの逸脱や変化を感知しうる可能性があると考えたからである。これらの分析の成果の一部は、今年度中には刊行できる見通しである。以上の研究と合わせて、ビザンツ皇帝権に関連して、昨年6月の西洋史学会で、コンスタンティノープルの都市騒乱に関する口頭報告を行い、今年3月には11世紀中葉の貴族反乱に関する論考を公刊した。これらは、直接的には皇帝の帯びる霊性とは関連しないように見えるが、両者ともに帝都コンスタンティノープルが帯びた一種の聖域性が重要なポイントを成している点で、今回の研究と密接に結びついた成果と言える。
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Research Products
(3 results)