2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520750
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
中嶋 毅 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (70241495)
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Keywords | 西洋史 / ロシア人 / 中国 / 亡命者 / 満洲国 |
Research Abstract |
本研究は、1932年に成立したいわゆる「満洲国」に居住した亡命ロシア人の生活世界の実態および満洲国の統治政策と亡命ロシア人世界との相互関係を同時代の史料に基づいて分析し、当地の亡命ロシア世界が東アジアにおいて果たした機能とその歴史的な意義とを実証的に解明することを課題とした。本年度は、満洲国における亡命ロシア人統合組織であった白系露人事務局」の実態の解明と、満洲国形成に至る時期の東北アジアのロシア人社会の変容について考察した。この研究課題の遂行を通じて、以下のような諸点を明らかにすることができた。(1)満洲国が成立すると、同国内のソ連勢力に対抗する必要だけでなく日本の対ソ戦略の観点からも、白系ロシア人の統合が目指された。しかし白系ロシア人は、伝統的なロシア文化を維持することを自らの「歴史的使命」と考え、当局による統合に容易には引き入れられなかった。(2)1935年の中東鉄道の満州国移管にむけて白系ロシア人の体制への統合が急速に本格化し、1934年12月末に「白系露人事務局」が組織され、さまざまな圧力の行使を通じて同事務局は白系ロシア人社会への統制力を次第に強化していった。(3)しかし満洲国においてソ連の影響力が完全に消滅したわけではなく、同国にはソ連のエージェントがさまざまな組織内で活動を続けた。白系ロシア人統合機関であった白系露人事務局もその例外ではなく、白系ロシア人の登録業務を管轄する事務局第3課の課長を務めたマトコフスキイもまた、ソ連のエージェントであった。こうした人々の活動によってソ連側は、満洲国の白系ロシア人の動向を的確に把握していたものと考えることができる。
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Research Products
(4 results)