2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520750
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
中嶋 毅 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (70241495)
|
Keywords | 西洋史 / 在外ロシア / 白系ロシア人 / 満洲国 |
Research Abstract |
本研究は、1932年に成立したいわゆる「満洲国」に居住した亡命ロシア人の生活世界の実態および満洲国の統治政策と亡命ロシア人世界との相互関係を同時代の史料に基づいて分析し、当地の亡命ロシア世界が東アジアにおいて果たした機能とその歴史的な意義とを実証的に解明することを課題とした。本年度は、満洲国における亡命ロシア人による学術団体の組織化の実態解明と、彼らロシア人研究者による学術研究活動の展開について考察した。この研究課題の遂行を通じて、以下のような諸点を明らかにすることができた。(1)帝政末期にハルビンで初めて学術団体が組織されて以降、在満ロシア人学術団体は、異郷の地においてロシア科学の研究方法を満洲研究に適用して未知の領域の探査を遂行し、独自の満洲地域研究を切り開くことに成功した。(2)在満ロシア人研究者の組織化は、あらゆる領域での満洲研究を総合的に実施することを可能にし、彼らの研究を急速に発展させた。そしてその成果は、これら学術団体の機関誌や多様な刊行物という媒体を通じて、ロシア語圏はもとより世界に向けて精力的に発信され、世界的にも未開拓であった満洲研究の進展に著しく大きな貢献をなした。(3)在満ロシア人の学術研究活動は、帝政ロシアの影響下、ロシア革命後の混乱とソヴィエト勢力の管理下、中国東北政権さらには満洲国統治下と変転する満洲地方の激動の中で、形態を変えながらも一貫して維持されていった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成21年度から23年度にかけて、本研究課題に関して、1)満洲国における亡命ロシア人統合組織の解明、2)亡命ロシア人の精神的支柱としてのロシア文化の維持活動の一環である学術活動の展開過程の解明、という領域で研究を進め、当該テーマに関する研究成果を公表することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記11に記したこれまでの研究成果をふまえて、本研究課題の最終年度となる本年度には、在外ロシア世界におけるロシア人亡命者の統合の核として機能したロシア文化の維持に不可欠であったロシア語による文化の再生産過程を研究の中心的課題に設定し、これに関連する史料の収集とその分析に従事する。この作業と併せて、昨年度までに達成された成果と本年度の研究の進展とを総合して、満洲国のロシア人統治と亡命ロシア人社会の変容に関する学術論文を執筆する。
|
Research Products
(2 results)