Research Abstract |
(1) 限界集落の分布と属性を明確にした 農林水産省の委託を受けて農村開発企画委員会が行った全国における限界集落調査のデータを入手し,地形図や道路地図などを用いてその位置を特定し,GISを用いて限界集落の分布を地図化した。あわせて,農業集落カードを用いて集落名が合致するものについてのみ,集落の属性を整理した。限界集落の実態は政府が行ったわずかな調査においてその名称が把握されているに過ぎず,全国における分布を把握したのは,本研究が初めてだと思われる。 また,中国地方中山間地域研究協議会が所有している集落データのうち,公表が許された島根県を対象に,全集落と農業集落との突合を行った。その結果,限界集落や危機的集落の分布とともに,その属性がある程度明らかになった。従来の研究においては,大半が農業集落のみを取り扱った研究であるが,農林業センサスでは非農家世帯の高齢者数が把握できないため,いわゆる限界集落の把握ができなかった。本研究において,島根県というメソスケールで両者を突合することにより,従来明らかにできなかった限界集落の立地特性が明確になった。 (2) 集落の限界化過程について明らかにした 消滅集落や限界集落の発生とそのプロセスを解明した。本研究では(1)で構築した集落データベースを用いて,集落の人口,世帯の動態を類型化するとともに,フィールドワークを行って,限界化過程を考察した。その結果,集落の限界化は無住化へのプロセスであること,限界集落と認識されていない集落においても,集落世帯員の年齢構成から検討すると限界集落予備軍の集落が多数存在していること,集落が無住化しても元集落住民を中心に土地が利用されていること,などが明らかになった。以上の結果から,本研究が追究している「むらおさめ」以外に,無住化後の集落をどのように捉えるのかといった社会的課題が浮き彫りになった。
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