Research Abstract |
本研究では集落機能の維持・向上及び国土資源管理的な視点を基軸として,集落の限界化過程を明らかにした上で,最終的に集落が消滅していくメカニズムを解明することを目的としてきた。同時に,集落機能が消滅した際に集落の終末を見据えた「むらおめ」のあり方について検討することを目的としてきた。 とりわけ,本年度は島根県を対象に実際に消滅した集落を把握した。また,無住化集落(消滅集落)を訪問し,通勤耕作者等に対して集落の消滅過程や現在の耕作状況についてヒアリング調査を行った。これにより,集落の消滅過程が把握できるとともに,無住化集落の社会的役割について評価できた。平成時代における集落の無住化は「自然消滅」タイプが多く,昭和の過疎で代表的な「挙家離村」型はほとんどみられないことが明らかになった。一方で,無住化集落へも通勤耕作者は一定数存在し,集落に居住者がいなくなったとしても,集落がなくなったとは言えないことが明らかになった。 さらに,今後消滅が危惧される集落については,現在どのような生活が営まれ,資源管理が継続されているのかを調査した。そして,集落の最期を迎えるにあたり,何が必要で,周辺地域からどのような支援が必要なのか,フィールドワークを中心としてその実態を把握した。 一方,消滅集落に対する社会的援助と文化・歴史等のアーカイブ機能を含めた「むらおさめ」の理論化について検討はしたものの,その概念等を整理し,一般化するには至っていない。また,「昭和の過疎」など,過去における集落の消滅に関しても,その復元は十分に行われていない。今後は,本研究で得られた「むらおさめ」の実態が集落の歴史を踏まえてどのように位置づけられるのかについて検討することにより,集落の限界化と無住化を動態的に捉える必要がある。
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