2011 Fiscal Year Annual Research Report
バスク地方における脱領域化・再領域化のボーダースケープに関する地理学的研究
Project/Area Number |
21520802
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Research Institution | Kyoritsu Women's University |
Principal Investigator |
石井 久生 共立女子大学, 国際学部, 准教授 (70272127)
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Keywords | 人文地理学 / バスク地方 / 国境地域 / ボーダースケープ |
Research Abstract |
本研究は,主権国家の境界空間,いわゆるボーダーランドに位置するバスク地方が,領域として実体化する様子を,ボーダースケープという景観概念を導入し,それに関与する諸アクタと空間の相互作用を観察することで明らかにすることを目的としている。 ボーダースケープを表象する指標として「基礎自治体名称」を採用し,その修景過程の観察を試みた。一昨年度はバスク自治州,昨年度はナバラ自治州を重点的に調査した。最終年度の本年度は,フランスバスクの調査を実施したが,フランスバスクは行政が地名変更に積極的関与していないために,興味深い事例を観察することはできなかった。それに対し,バスク自治州とナバラ自治州の基礎自治体名称変更を継続観察するなかで,興味深い事例が登場し,現地調査を実行した。その一つがナバラ自治州南部のOlite/Erriberiの事例である。同自治体は2009年当時,バスク語政策に寛容な左派勢力が議会多数を占めていたために,0liteというカスティーリャ語単独名称からバイリンガル名称へ変更した。しかし2O11年3月の選挙で右派勢力が議会多数を占め,同年9月に単独名称Oliteへ再変更することを可決し,その後,バスク語アカデミーやバスク語擁護派の弁護士集団らが異論を唱えている。この事例から言えることは,地名のバスク語化は政治の影響を強くうけており,政治的主体の関与を解明する必要があるということである。ただし今回の調査では,ナバラ州中部のOrkoienの名称変更では自治体のテクノクラート集団が重要な役割を果たしたことが明らかになり,さらにナバラ州北部バスク語圏のOrbaizetaではバスク語アカデミーの複雑な関与が観察された。これまではボーダーランドの政治地理学的景観を描写することに努めてきたが,バスク語正常化に関与する広範な主体の作用が観察されることから,ボーダースケープはバスク語正常化の総合作用として観察すべきという結論に至った。
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Research Products
(3 results)