2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520816
|
Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
福浦 厚子 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (90283548)
|
Keywords | 文化人類学 / 喜捨 / 慈善 / 宗教活動 / シンガポール |
Research Abstract |
多様な宗教が存在するシンガポールにおいて、今年度はイスラームやヒンドゥー、仏教などを信仰している人々を対象に、「喜捨」と「慈善」に関して、日常実践の文脈における意味について多面的に聞き取りを行った。喜捨や慈善活動が対象としている病気等からの医療的救済や社会的苦難からの解放、あるいはさまざまな社会福祉制度やそれに付随する腎臓透析医院の維持などがどのような私的な営為によって担われているのか、またその背景となる考え方にはどういうものがあるのか、人々の意見をもとに検討を行った。 慈善活動の担い手はイスラーム系、ヒンドゥー系など様々あるが、そのなかでも、華人系の仏教系慈善施設である善堂に焦点を当て、歴史的な経緯を含め、関わっている人々を対象とした人類学的な調査を行った。また、その他に19世紀以来、企業メセナの先駆的な形ともいえる活動を行ってきたある企業経営者の末裔を対象に、現在における目的や今後の展望などについての聞き取りを行った。 それらをもとに慈善活動の現況や意味について、鳥瞰図となるべき論文をまとめた。これは今年度中に発表する予定である。この研究成果は国民国家のあり方、政府の社会福祉政策のあり方、住民主導の制度設計のあり方などについて広く他の社会との比較検討が可能な課題を含んでいる。例えば、津波などの災害により喪失したコミュニティの再構築について考える際や、あるいは多様な公共制度の将来的な展望を考える際にも、ひとつの手がかりを与えるものになるであろう。
|