2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530038
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
稲 正樹 International Christian University, 教養学部, 教授 (00113655)
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Keywords | アセアン憲章 / アセアン政府間人権委員会 / 人権侵害に対する調査・救済機能 / トランス・リージョナルな市民社会 / 東北アジア |
Research Abstract |
2009年10月に開催されたアセアン首脳会議において「チャアム・フアヒン宣言」が採択され、2007年11月の「アセアン憲章」に基づいて、人権機関の設立が決定された。アジア地域においてはじめての地域人権機関である「アセアン政府間人権委員会」が発足した。 「アセアン政府間人権委員会」の目的には、人民の人権と基本的自由を促進・保護し、人民の平和・尊厳・繁栄のうちに生きる権利を保持することと同時に、「国家的・地域的特質と異なった歴史的・文化的・宗教的背景の相互尊重を考慮に入れ、権利と責任の均衡に留意して、地域的文脈の範囲内で人権を促進すること」が規定された。 この機関の基本的な性格は諮問的な機関であり、(1)加盟国の独立・主権・平等・領土統合及び国家的同一性の尊重、国内問題への不干渉、外部の干渉から解放され国家的存在を指導する各国の権利の尊重、(2)人権の二重基準と政治化を回避し、公平性・客観性・非選択性・非差別性、すべての人権・基本的自由の普遍性・不可分性・相互依存性・相互関連性を含めた国際人権原則の尊重、(3)人権・基本的自由の促進・保護の第一の責任は各構成国にあることの認知、(4)人権・基本的自由の保護と促進における建設的・非対決的なアプローチの追求、(5)人権の発達と基準に貢献する漸進的なアプローチの採用が、原則として掲げられた。任務と権限に関しても、(1)人権と基本的自由の促進・保護、(2)アセアン人権宣言の発展、(3)人民間の人権意識の増大、(4)国際人権条約上の義務の効果的な履行のための能力開発の促進、(5)国際人権文書の批准・加入の奨励などにとどまっており、人権侵害に対する調査・救済機能は欠如している。 北朝鮮を包摂する「東アジア共同体」こそ、トランス・リージョナルな市民社会の創出を目指すものであるという問題意識のもとに、既存の人権メカニズムの限界と弱点をどのように克服して、東北アジアにおける人権メカニズムを制度化するかの課題を、引き続き検討したい。
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Research Products
(1 results)