2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530063
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
王 雲海 一橋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (30240568)
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Keywords | 民国期中国 / 植民地刑法 / 死刑 / 西洋的死刑基準 / 政治闘争としての死刑 / 国民党の死刑政策 / 共産党の死刑政策 / 軍閥の死刑政策 |
Research Abstract |
平成22年度は、民国中国時代の刑事政策と死刑制度を中心に、判例や文献の講読や現地調査などの方法を通じて、理論的と実態的な研究を行った。その結果として、民国期中国においては、死刑に対する考え方として、西洋文化から影響を受けて、死刑の制限やその手続の正規化をはかるべきという流れがあった。他方、内線アドの政治的要素により、死刑を何よりもまず政治闘争や軍事闘争の手段として無制限的に利用してもよいという意識が強かった。全体として、死刑を法律の問題として刑事政策的に捉えることにはまだ至っていなかったのである。また、民国期の死刑の実態として、一時期的に西洋的死刑制度を試みたものの、殆どの時期においては、伝統封建中国における死刑制度やその恣意的運用は革命派か反革命派を問わずに一様的に行われていた。中国の歴史の連続性が民国期においても強く見られた。この点に対する研究と認識はこれまでは指摘されていないが、平成22年度の本研究はそれたはじめて研究、指摘することができたわけである。今後の中国での死刑研究にとった有意義である。 また、平成22年度も民国期の中国死刑の研究を行うと同時に、現に中国の死刑政策や死刑制度の変化に着目してそれらの変化を注意深く研究、調査してきた。その結果として、特に平成23年2月25日に行われた中国刑法の第8回改正で死刑罪名数を68個から55個に減らし、75歳以上の老人被告人に対して原則として死刑を適用しない内容が含まれていたが、その改正作業過程において本研究の一環として日本での経験を紹介したりすることでそれに寄与したし、改正後の中国での死刑政策と死刑制度の変化をもこの研究の一環として速やかに日本へ紹介することみできた。日中刑事法学界での相互交流や相互連動を促進した。
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