2011 Fiscal Year Annual Research Report
刑事訴訟における被害者参加制度の実証的研究~改正法の「3年後見直し」に向けて~
Project/Area Number |
21530067
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
中島 宏 鹿児島大学, 大学院・司法政策研究科, 教授 (00318685)
|
Keywords | 被害者参加 / 刑事法学 / 裁判員 |
Research Abstract |
1.被害者参加にかかる事例調査 本研究は、被害者参加制度が導入された刑事裁判において新たに生じる問題を実証的に明らかにしようとするものである。そのため、被害者参加が行われた刑事公判の傍聴を行ってきた。平成22年度までの研究において、事件件数は相当程度に上ったものの、事案のバリエーションにおいて十分なサンプルが得られていなかったことから、平成23年度においても引き続き公判の傍聴を行った。被害者参加が行われた事件のほか、比較対象として、刑訴法292条の2による意見陳述が実施される事件の公判も対象とした(鹿児島地裁、東京地裁、大阪地裁)。事案のバリエーションとしては、少年が被告人である事件が不可欠であるが、研究期間内には実現できなかった。平成22年度までは弁護人からの聞き取りを重視したが、平成23年度は、被害者弁護士からの聞き取りを開始した。現時点ではなお分析途中であり、成果の公表は、平成24年度中を予定する。 2.被害者参加の理論的研究 被害者参加をめぐる理論的研究として、(1)平成19年刑訴法改正の経緯を踏まえた刑事訴訟の目的論にかかる考察、(2)被害者参加が行われた場合の刑事訴訟構造のモデル論的考察、(3)手続二分の必要性に関する具体的考察の3つをテーマとして取り組んだ。各テーマについて独立した論文を平成24年度中に公刊する予定である。 3.被害者供述の保全に関する研究 上記の実証研究の過程において、被害者参加に関する本研究課題からの派生問題として、被害者供述を捜査段階において証拠として収集する方法の重要性に注目した。被疑者取調べの可視化ないし高度化をめぐる議論に加えて、被害者からの事情聴取の高度化についての研究に着手した。このテーマについては、平成23年度から共同研究者として参加する研究課題:新学術領域研究(研究領域提案型)「取調録画と裁判員裁判-取調べ過程の可視化をめぐる制度構築と裁判員裁判への影響」に接続して引き続き研究を行うことになる。
|